徹夜明けにコインランドリーへ向かった。俺の家には洗濯機がない。
コインランドリーの入口の音。
洗濯物を放り込み、ベンチで座っていると猛烈な睡魔に襲われた。
目が覚めると、開かれた洗濯機の蓋から女の手が伸びている。
こんばんは。
・・・こんばんは。
そんなところで寝て大丈夫?
ああ・・・
徹夜なんてするもんじゃないよ。もう若くないんだから。
いや、時間がなくて。
そんなにバラすの時間がかかったの?
ああ・・・
私、最後までめんどくさかった?
ああ・・・
ごめんね。めんどくさくて。
いや。俺のほうこそすまん。
もう遅いよー。
おまえ、何してんの?
え?何してんだろうね?わかんない。
そっか。
自首するの?
いや、まだ決めてない。
早く決めたほうがいいよ。
するならする、しないならしないで早く捨てないと。
そうだな。どこに捨てられたい?
どこでもいいよ。もう自分の身体には興味がないんだ。
へぇ・・・あのさ。じゃあもう自分の服にも興味ない?
汚しちゃったからわざわざ洗濯機にかけてんだけど。
気に入ってたじゃん。あの服。
あー・・・うん。興味ないかな。
そっか・・・
ごめんね。気使ってくれて。でもあの染みは取れないと思うよ。
ピーッと洗濯が完了した音がする。
目が覚めると洗濯はとうの昔に終わっていた。
コインランドリーの入口の音。
女が入ってくる。
いつまで洗濯してんのよ?
・・・ああ。
どうしたの?呆けた顔して?
いや。寝てたみたい。
はぁ?バカじゃないの?
ああ・・・
セーターの染み取れた?
いや、まだ確認してない。
女は洗濯機の蓋をあけて、セーターを取り出す。
あ。綺麗になってる。よかったねー。
取れなかったら一生私の機嫌、治んなかったと思うよ。
あのセーター、大切にしてたもんな。
まぁ取れたし、ゆるしてあげるよ。私も言いすぎたと思うし。ごめんね。
なぁ?
何?
・・・ついてた染みって何の染み?
終わり