- 僕
- 「もう12月です。僕達がいる場所も、ひんやりと冷えてきて吐く息も真っ白。
でも、それでも僕達は今日も走りに走ります。
こんな寒い日に何故かって?
それはね・・・・1年で最も忙しいクリスマスがやってくるからです。」
- 笛の音。ピッピッ。
- 職人
- やあ、今日もがんばるね。
- 僕
- ぜえぜえ・・・こんにちは・・・・休憩なの?
- 職人
- まあねえ・・・・・暇なんだよ。
- 僕
- えっ、おもちゃ工場は今が一番大忙しの時期なのに?
- 職人
- 残念ながら・・・・・「信じる心」ってのがないみたいなんだ最近の子は。
- 僕
- どういうこと?
- 職人
- どうも・・・・サンタはおとぎ話だと思ってるみたいなんだ。
- 僕
- ええっ・・・・・そんなのおかしいよ、サンタさんいるじゃないか。
- 職人
- そうだろ・・・・その気持ちがかえってサンタの魔法を弱くしてるって気付かないのかねえ。
- 僕
- 大変だ・・・・僕、いかなくちゃ!
- 僕
- 「僕は、慌てて流星にまたがって高い空から降りて行きました。
目をパチパチと瞬き3回で、到着したよ・・・・流星はそっと僕を下ろすとクルクルと回転しながら何処かに行ってしまったけど、大丈夫だ寂しくないぞ。」
- クリスマス・ソングが途切れ途切れに流れてくる街の雑踏。
- 僕
- うわあ、賑やかだなあ・・・・大人ばかりだ・・・あれ、サンタさんがいる!
サンタさーん、クリスマスじゃないのにどうしているの!?
あっ!あそこにもサンタさんがいる・・・・・え、ここにも、あっちにも!?
- 街の雑踏が静かになっていく。
- 僕
- なんだか、沢山のサンタさんがいたけれど、僕の知ってるサンタさんじゃなかったなあ・・・・・あっ、やっと子供を見つけた。
- 少女
- 違うわよ、絶対にいるもん!
- 少年
- バーカ、いるわけないよ、サンタなんて。
- 少女
- それは、あんたがいつも意地悪をする悪い子だからでしょ!
- 少年
- うるさいなあ・・・・サンタの正体をオレは知ってんだぞ!
- 少女
- え?
- 少年
- サンタはな、パパとママがこっそりなりきってんだぞ!
- 少女
- ちがうもーん、ちがうったら・・・・・。
- 少年
- 泣いてもやめないぞ・・・・本当なんだからなっ!
- 僕
- おい、やめろったら!
- 少年
- なんだ、お前・・・・・本当なんだったら、パパとママに言いつけてやる!
- 少年、走り去る。
- 少女
- ありがと・・・・・ねえ、サンタさん、いるよね?
- 僕
- うん、勿論さ。
- 少女
- わあ・・・・何歳までサンタさんって来てくれるのかなあ。
大人になったらきてくれないんでしょう?
- 僕
- そうだね・・・大きくなったら目に見えるプレゼントはないけど、その代わり「大切なもの」を届けに来てくれるんだよ。
- 少女
- だいじなもの・・・?
- 僕
- 僕もよくは分からないんだけど、大人になったら辛い時や哀しい時があっても、すぐに泣いたり疲れたーって言えなかったり、何かを信じられなくなったり落ち込んだりする時があるんだって。
でも、そんな時に大丈夫になって頑張れるようにって、目には見えない大切なものをサンタさんが・・・・そっとプレゼントしてくれるんだ。
一年間、頑張ったご褒美なんだって。
- 少女
- ふーんそうかあ・・・・でも、あたしは・・・・おもちゃが欲しいなあ。
- 2人、思わず笑う。
- 少女
- 暗くなってきたね・・・・帰らなくっちゃ、バイバイまたね。
- 僕
- バイバーイ、またね。
本当に暗くなってきたな・・・僕は今は何処にいるんだろ?
鼻の灯りでも暗いなあ・・・・・・。
- キラキラとした音。
- 僕
- わっ・・・眩しい!
クリスマスツリーか・・・・・綺麗だなあ。
あっ、あの星・・・・・あの時の流星だ!
おーい、ありがとう・・・・・とっても綺麗だねピカピカしてる!
- キラキラ。
- 僕
- 流星さん、もうひと踏ん張りしてくるよー!
よし、頑張らなくっちゃ。
- 僕
- 「こうやって短い僕の旅は続きます。今度はあなたの住む街へ行くかもしれません。
赤鼻をした男の子を見かけたら、それは僕かもしれませんよ。ふふふ。」
- おわり