- 男
- 待った?携帯の充電切れちゃって、連絡出来なくってさー。
- 女
- へえ・・・本当は携帯でゲーム熱中したりして。
- 男
- ええっ・・・・違う違う、そうじゃないって・・・充電するの忘れちゃってさ。
- 女
- へえ、携帯大好きなのに珍しいね・・・
ほら、通勤電車でよく見かける携帯依存症なぐらい。
- 男
- えー、そんなことないよ。
- 女
- そうかなあ・・・・。
- 男
- それで・・・行きたいて、言ってたお店って何処だっけ?
- 女
- ほら、あのビルの一階・・・・。
- 男
- 「充電しそびれたなんて、本当はウソ・・・なんだよね。
そう、彼女の言うとおり・・・・・携帯ゲームに熱中してました。
これって・・・・彼女が言うケイタイイゾンショウ・・・・?
いや、違う・・・・断じて違う・・・・と、思う。
ゲームばかりって彼女はいうけど、
これがあれば漫画や小説、新聞ニュースだって購読して読めるし、
大抵の文書やファイルだって出先でも確認出来ちゃう、優れもの。
これがなくっちゃ、始まらないでしょう。
携帯電話って言うぐらいなんだから「携帯」しない手はないでしょ、うん。
あ・・・・・そう言えば、カードバトルゲーム、確か今晩からイベントって
告知出てたよな・・・・・何時だっけ・・・・・あ、充電切れてたんだ。」
- 女
- 何、携帯見てんの・・・・充電ないくせに。
- 男
- だよね・・・・・何時かなあ・・・・なんて。
- 女
- 腕時計・・・・してるのに?
- 男
- あ・・・・ですよね・・・・・ははは。
で、次はどうしようか?
- 女
- 帰る・・・・・。
- 男
- あ・・・・そうなの?
- 女
- うん・・・・・明日、仕事早いの。
- 男
- そうなんだ・・・・それじゃあ、おやすみ。
- 街の雑踏に紛れて、女帰っていく。
- 男
- いつもだったら、バーにでも寄ろうっていうのに、余程忙しいんだな。
まあ、こっちも家に帰って・・・・・ゲームイベント参加するか。
- ジリリリ。めざましの音。
- 男
- あれ、先に携帯のアラームで起きるはずなのに・・・なんで?
携帯画面真っ暗・・・・・充電切れたかなあ・・・・
あれ、電源挿しても再起動しても・・・・・ダメ。
壊れた・・・・・仕方ない、会社帰りに行くか・・・・。
- 自動ドアが開く音。携帯ショップ。
- 店員
- いらっしゃいませ、こちらへ・・・。
- 男
- (遮るように)携帯壊れたみたいなんです・・・・1年も経ってないのに。
- 店員
- 申し訳ございません、交換はこちらでやっておりませんので、この地図にございます修理センターにお願いします。
- 男
- ええっ・・・・修理センター・・・・まだ間に合うな・・・・急がないと!
- 走って息が上がる男。
- 男
- あ・・・・あの、携帯壊れたんですけど!
- バイト
- あ・・・・・サーセン、受付もう閉めきっちゃったんですよ。
- 男
- 7時までって聞いたのに。
- バイト
- あー、今日だけで70人待ちになっちゃって・・・・5時で終わっちゃいました。
- 男
- じゃあ、明日の優先的な整理券とか。
- バイト
- サーセン、ないですね・・・・まあ早く来てもらってもすぐ治るかどうかなんて保障できないんすけどねーサーセン。
- 男
- そんな・・・・・仕事休めないし。
もう買い換えるしか・・・・・ないか。
っていうか・・・・・もうこんな時間か・・・・・店、閉まっちゃってるなあ。
疲れた・・・・・・晩ご飯食べてないし・・・・・そういや彼女と電話で話してない・・・・・
当たり前か、電話壊れてるし・・・・心配してるかなあ。
っていうか、話したいなあ・・・・・それよりも無性になんか会いたい。
- ピンポーン。ガチャリ。
- 女
- どうしたの・・・来るなら電話してくれたらいいのに。
- 男
- いや・・・・今日は携帯電話は携帯してないんだ。
- 女
- 何、それ?
- 男
- いい匂い・・・・。
- 女
- ちょうど、カレー作ってたとこなの・・・食べる?
- 男
- うん・・・・お腹減っちゃってさ、ありがとう。
- 女
- どうしたの・・・・何、泣いてるの?
- 男
- なんでもない・・・・。
- 女
- 変なのー。
- 2人の笑い声。
男の留守番電話のメッセージ
「ただいま、携帯電話を携帯しておりません。御用の方はメッセージをどうぞ」
- おわり