- 走る音がする。
- 男
- いつからだろう。私が走りを止められなくなったのは・・・
- 店員の声
- いらっしゃいませー。ご注文お決まりでしたら、マイクに向かってどうぞー。
- 男
- テリヤキバーガーのセット。
- 店員の声
- ポテトはプラス100円でLサイズにすることができますが。
- 男
- いやMで。
- 店員の声
- 飲み物はいかが致しますか?
- 男
- ウーロン茶。
- 店員の声
- 今、チキンナゲットが100円となっておりますが、いかが致しますか。
- 男
- いらない。
- 店員の声
- 今、フライドチキンの50円セールをしております。いかが致しますか。
- 男
- いらない。
- 店員の声
- かしこまりましたー。それでは前のほうへどうぞー。
- 間
- 店員
- ・・・何してんすか?
- 男
- いいからテリヤキバーガーのセット。
- 店員
- あの、ここドライブスルーっすけど
- 男
- 知ってるよ。
- 店員
- なんで車、乗ってないんすか?
- 男
- 免許持ってないから。
- 店員
- ・・・そうなんすか。
- 間
- 店員
- え?なんで走ってるんすか?
- 男
- おまえに関係ある?
- 店員
- 関係はないっすけど、明らかおかしくないっすか。足、止めてくださいよ。
- 男
- 止まらないよ。
- 店員
- どうやって食うんすか?
- 男
- 走りながら食うんだよ。
- 店員
- 難しくないっすか。
- 男
- もう慣れた。
- 店員
- ちょっと待ってください。走りながら?え?
ハンバーガーでしょ?ポテトでしょ?ウーロン茶でしょ?
- 男
- いいからよこせよ。
- 店員
- おかしいでしょ。明らかに。
- 男
- 何もおかしくない。お前は走ったことがないのか。
- 店員
- 走ったことはありますけど、走り続けたことはないっすよ。
ましてや走りながらドライブスルーに入ったことなんて。
- 男
- 馬鹿野郎!死ぬまで人生走り抜かないどうする!?立ち止まるな!若者よ!走れ!若者よ!おまえ、そんなところで何やってる?
- 店員
- え?何って・・・バイトっすけど。
- 男
- バイト?小さい箱の中で立ち止まってバイトだと?
- 店員
- 別に立ち止まってるわけじゃ・・・
- 男
- 俺にはお前が立ち止まってるように見えるね!おまえに夢はないのか?
- 店員
- いや、ありますよ。夢ぐらい。
- 男
- 言ってみろ!
- 店員
- いやその・・・僕、バンドマンで・・・
- 男
- (遮り)武道館をいっぱいにしたいって?無理だね!
- 店員
- な、なんだと!
- 男
- だって、おまえ、立ち止まってるもん!!
- 店員
- バンドマンにも金が必要なんだよ!
- 男
- 言い訳にしか聞こえないね!武道館をいっぱいにしたけりゃ立ち止まるな!走り続けろ!じゃあな!テリヤキバーガーのセットはもらっていくぜ!
- 店員
- あ!ちょっと!!お金!
- 男が走り去る音がする。
- 店員
- 僕はその走り続ける男を追いかけた。
あいつはとんでもない速さで国道を走った。
あいつはまったく止まる気配がなかった。でも逃がすわけにはいかない。
お金を払ってもらわないと・・・
そして月日が流れた。
僕は走ることの大切さを知った。
夢をかなえたければ立ち止まってはいけない。
僕は走り続けなければならないんだ。夢をかなえるために・・・
あれ?僕の夢ってなんだっけ?あれ?いつからだろう?
僕が走りを止められなくなったのは・・・
まぁいっか!!大切なのは走り続けることなんだから!
- 男の声
- いらっしゃいませー。ご注文お決まりでしたら、マイクに向かってどうぞー。
- 店員
- テリヤキバーガーのセット。
- 男の声
- 夢はプラス100円でLサイズにすることができますが。
- 店員
- LLサイズでよろしく!!
- 終わり。