雨が降りしきる音。
ガラリと窓をあける音。

男

・・・・・・いい、お天気になりますように！

雨はやまない。

男

今度こそ・・・・・雨がサーッと引いて、パーッと晴れるから。
いいお天気に、なりますように・・・・！

遮るように更に、雨音が激しくなる。
慌てるかのように窓を閉める音。同時に雨音は遠くなる。

女

ちょっと、休憩しましょう。

男

（大きな溜息を付いて）・・・・・・・・なんでかなあ。

女

あの・・・・私、思ってませんから。

男

えっ？

女

雨が降ればなんて・・・・・うっかり・・・・いえ、絶対思ってませんから！
毎日・・・・絶対、晴れになりますようにって空に向かって祈ってたんです。
うっかり思ったら雨が止まないってあったけど、絶対違いますから！

男

そんなこと疑ってないから・・・・そもそも、雨が降るなんて、思い込みだよ。

女

先輩だって、人のこと言えます？

男

いや・・・・・僕の「晴れ男」は個性で、君のはただの思いこみでしょ。
「雨女」って本来は、大事なイベントに限って雨が降るから・・・・・あ。

女

私・・・・本当の意味で・・・・「雨女」に、なっちゃったんですね・・・・。

男

みたいだねえ・・・・・（慌てて）いや、そんなの、偶然だって。

女

（遮るように）大事なイベントというイベントの中でも、一番肝心なのに限って・・・・・・有事の事態に備えて、ジューン・ブライドを外したのに。
ガーデンウェディング・・・・チャペルから出てきて・・・・
青空の下でブーケ投げたかったなあ。

男

ねえ・・・・・人の話、聞いてる？っていうか、なんだか、過去形になってるし。

女

だって・・・・・正真正銘の「雨女」になったんですよ。
おまけに、先輩・・・・もう「晴れ男」じゃなくなっちゃってるし・・・・。

男

・・・・・・ごめん。

女

あ・・・・・・ごめんなさい。

男

え？

女

なんだか・・・・・自分のことばっかり・・・・・ですよね。
残念なのは、先輩だって一緒なのに・・・・ごめんなさい。

男

だって、今日は・・・・・君が主役なんだから、そうなるのも仕方ないよ。

女

でも・・・・・。

男

１つ・・・・・聞いてもいい？

女

はい・・・・・どうぞ。

男

もし・・・・・もしもだよ、このまま僕が君の思う様な「晴れ男」じゃなかったら、どうする？

女

え？

男

例えばだよ・・・・・新婚旅行に行ったとして、今みたいに雨が降ったら？
将来子供が出来て・・・その子が遠足とか運動会とか、とにかく大事なイベントがあって・・・・・でも雨で・・・・・
なのに、僕がそれでも「晴れ男」じゃなかったら・・・・・・君、どうする？

女

そんな時は・・・・・・・。

男

そ、そんな時は・・・・？

女

相合傘で過ごせばいいんです。

男

え？

女

子どもが・・・・・出来たとして、もし雨ばかりになっても・・・・その子が雨が好きになってくれるような、可愛い雨合羽と長靴みつけたらいいかなって。

男

でも・・・・・今はそう思っても・・・・・全く晴れなかったら・・・。

女

そんなの、関係ないです。

男

え？

女

だって・・・・・・私が好きなのは「晴れ男」じゃなくって、先輩なんですから。
晴れでも曇でも・・・・・そして雨でも・・・・・天気が変わたって、私の気持ちは変わりませんから。

２人、微笑み合う。

女

でも・・・・。

男

でも？

女

逆に・・・・私が、ずっと「雨女」だったら・・・・先輩、どうします？

男

知りたい？

女

はい・・・・。

男

そんな時はね・・・・・・。

男、勢い良く窓ガラスを開ける。降り続く雨。

男

いい・・・・・お天気になりますように！

雨が止む。

男

たまには失敗するかもしれないけど、そんな時は・・・・頑張ってみるから。

女

わあ・・・・・すっごくカッコイイです。

男

・・・・・・・でしょ。

２人、窓の外の向こうにかかる虹を見ている。

終わり