- 男
- ありえへん!
- ――男が池のほとりで憤っている。
- 男
- こんな振られ方ある? プロポーズの言葉も婚姻届も婚約指輪も全部無駄!
こんなもの、こんなもの、こんなもの!
- ――男、婚姻届を粉々に破り捨て、婚約指輪も池に投げ捨てる。
- 男
- 俺はもう終わりや……
- ――すると風が吹き水面が割れ、ファンタジックなSE。池から女神が現れる。
- 女神
- そなたよ
- 男
- マジかっ! め、女神!?
- 女神
- そなたが落としたのは、この金の指輪か、それともこの銀の指輪か、
それともこの指輪っぽいものか?
- 男
- 指輪っぽいて何やねん、指輪や! それです
- 女神
- おお、なんと正直な者でしょう。そなたにはこの金の指輪と銀の指輪と、
びっくりするくらいこんまいダイヤが乗ってる指輪、全て差し上げよう
- 男
- 失礼か! 人の給料3ヶ月分を!
- 女神
- 僕、がんばったねえ
- 男
- 大人や! 子供が3ヶ月こずかい貯めて買ったみたいな扱いやめ!
- 女神
- 受け取るがよい
- 男
- 要りません
- 女神
- なぜじゃ?
- 男
- プロポーズを断られたんです、もう僕に婚約指輪は必要ないんです
- 女神
- そなたが言ったプロポーズとは「一緒になろう」か、
それとも「毎日味噌汁を作ってくれ」か
それとも「恋人でいることに飽きた、結婚しよう」という、さっむい言葉か?
- 男
- 寒い言うな! それや!
- 女神
- おお、なんと正直な者でしょう。そなたにこの新しい婚姻届けを差し上げよう
- 男
- イヤミか! もう思い出したくもない
- 女神
- どうしたのじゃ?
- 男
- 遊ばれてたんですよ
- 女神
- え、うっそマジで?
- 男
- なんか急にキャラ変わったな
- 女神
- どういうこと?
- 男
- 二股かけられてたんです。
- 女神
- 二股ぁ!
- 男
- 「あんたは遊び、あんたみたいな甲斐性なしが本命なわけないやん」て……
- 女神
- まあ、その指輪見たら、そうやなあ
- 男
- 復讐したる
- 女神
- マジで? なんかすごい話になってきたな。え、ちょっと飲みに行く?
- 男
- 行くか
- 女神
- ちょっとじっくり聞くわ。とりあえず上がるわ。寒なってきた
- ――女神、池から上がる音。
- 女神
- で、復讐って何すんの?
- 男
- あいつの本命男にこのこと全部バラすんですよ!
- 女神
- しょーもな。やめときやめとき。そんなんしても虚しいだけやで。
いつまでも引きずってんと新しい恋探し
- 男
- でも!
- 女神
- きっと自分のそのさっむいプロポーズの言葉を、暖かく受け止めてくれる人もおるって
- 男
- 女神さん…………好き
- 女神
- 惚れっぽい奴か! 私は無理やで、これこれ(薬指の指輪)
- 男
- 結婚指輪? 女神も結婚とかするんですね
- 女神
- まーねー
- 男
- なんか元気出てきました
- 女神
- がんばれ!
- 男
- ありがとうございます! 俺、新しい彼女できたら報告に来ます! じゃ!
- ――男、走って去っていく。
- 女神
- がんばれよー! 女神が結婚か……。
まさか女神が忘れられへん恋を引きずってるとは思わへんやろな……。
いい機会かもな。私も新しい恋探してみよっかな。えい!
- ――女神、指輪を池に投げ捨てる。すると風が吹き水面が割れ、ファンタジックなSE。
池から男神が現れる。
- 男神
- そなたが落としたのはこの……
- 女神
- マ、マジかっ!!
- おわり