- 女
- 最近、ちょっとツイてない・・・・・。通販で、前から気になってたバッグを買ったら届いたのは・・・不良品。そんな気持ちを払拭しようと、ランチに天ぷら定食を食べていたら、いきなり歯の詰め物が取れるし。一晩寝たら、何か変わるかも!って起きたら、おでこに大きなニキビが・・・。そりゃあ、確かに変わったけど・・・でも、そういうことじゃないよね・・・ほんとにもう・・・・ちょっと、どころじゃない全くツイてない!?
- 男
- あ、あの・・・・。
- 女
- 何!?
- 男
- あの・・・・・いえ、何でもないです。
- 女
- 何でもない訳ないでしょう・・・・何?
- 男
- いや・・・・・・何って言われても。
- 女
- ん?
- 男
- あの、カウンセリングって言うよりは・・・・・占いなんですけどね、ここ。
- 女
- ああ、ゴメンゴメン。
- 男
- うわあ、気持ちこもってない・・・・・で、何を占いましょう?
- 女
- は?
- 男
- ええっと・・・・。
- 女
- そんなの、決まってるじゃないの。
- 男
- あ・・・・分かった、恋愛運?
- 女
- うーん・・・。
- 男
- ・・・・・じゃあ、仕事運?
- 女
- (溜息を付いて)なんか、違うのよねー。
- 男
- じゃあ、全体的なことを見る総体運ってやつですか?
- 女
- まあ、そんな感じ?
- 男
- ええっ・・・・なんて、投げやり。
- 女
- とにかく・・・・なんか、いいこと・・・・とにかく、いいこと沢山言って!
- 男
- ええっ・・・・・!?
- 女
- えーじゃないわよ、そうじゃなかったら、こんな街角の占い師のとこになんて来ないわよ!
- 男
- いやいや・・・・少しは、威厳有りそうな街の占い師とか、建前社会に貢献しましょうよ。
- 女
- だって、いつ通っても・・・・誰も、見てもらってる人、いないじゃない。
- 男
- 痛いところを・・・・。
- 女
- だから、勇気出して、酔っ払った勢いで来たんじゃない!
- 男
- どうりで、ロレツ回ってないと思ってました・・・・。
- 女
- つべこべ言わずに・・・ほら、早く!
- 男
- はい・・・・・・じゃあ、このカードを3つに分けてください。
- 女
- あら、手相とかじゃないの・・・・珍しいわね。
- 男
- で、この並べたカードをお好きな順にめくってください。
- 女
- はい・・・これでいい?
- 男
- ・・・・・・・・・・あ。
- 女
- 何・・・・・もう、ドバーッとラッキーでハッピーな出来事目白押しって感じ?
- 男
- えーと・・・・・・・えーと・・・・・。
- 女
- あのさあ、こういう時って普通は、良い事言うって決まってんじゃないの!?ウソでもいいから、今はご縁がないけど素敵な出会いが夏頃にとか。転機は秋にとか・・・・・あるでしょ!
- 男
- ええ、まあ・・・・・。
- 女
- もういい。
- 男
- え?
- 女
- 本当は、わかってるんだ・・・・・ツイてない時は、そりゃあツイてないし。だからって、占いでいいこと言われたからって、単純にすぐ気持ち切り替えられるほど、ノーテンキでもないし。
- 男
- わかってるんじゃないですか・・・・・・。
- 女
- まあね・・・・でも、それでもなんか良い事あるかな・・・・って思いたいわけよ。でも、なかなか歯車が回らない時って・・・・・誰かに全力で言ってもらいたいって言うかさー。
- 男
- そういうのは、友達と食事したり飲みに行った時とか・・・・・。
- 女
- 出来たら、とっくにしてるわよ・・・・学生時代ならともかく。就職、結婚、出産があれば・・・・・皆それぞれ忙しいもん。そんな時に、私の話を聞いてーなんて言えないわよ。
- 男
- じゃあ、恋人に・・・・。
- 女
- (遮って)いたら、こんなとこ来ない!
- 男
- ですよねえ・・・・・。
- 女
- 街の占い師なら、テキトーな良い事、たっくさん言ってくれるんじゃないかと思ったんだけどなあ・・・・。
- 男
- いやいや・・・・・プロですからね、調子の良い事ばかりは言えませんよ。
- 女
- だから、いつもお客いないんだね・・・・。
- 男
- まあ・・・・そうかも。
- 女
- 邪魔して悪かったわね・・・・いくら?
- 男
- え?
- 女
- 鑑定料よ。
- 男
- 何も、占ってないのに?
- 女
- まあ、残念な占いの結果聞かなかった料みたいなもんだと思って・・・・。
- 男
- もらえないですよ・・・・・いいです。
- 女
- なんか、悪い事しちゃったわね。
- 男
- その代わり、僕の話・・・・・聞いてもらっていいですか?
- 女
- 何・・・・・別にいいけど。
- 男
- あなたは、ツイてます!
- 女
- え!?
- 男
- 本当は、ツイてるんです。今度、代わりのバッグが来た時には、喜びも人一倍だし、歯の詰め物は可哀想だけど・・・・その代わり、きちんと治療出来るじゃないですか。
- 女
- そりゃあそうだけど・・・・。
- 男
- 全部、気の持ちようなんですよ。たまには、脳天気になって良かった探しをしてみたっていいじゃないですか額に皺寄せて難しく考えたって余計ツイてないだけです。そうすれば、そのニキビもすぐに治りますよ。
- 女
- (笑いながら)わ・・・・・やっぱり、目立つ?
- 男
- やっと笑った・・・・・・そうしてる方がずっと可愛いし、ツキも急上昇ですよ。
- 女
- わあ、占い師みたい!
- 男
- 占い師ですから。
- 2人、思わず笑う。
- おわり。