近所のファミレスにて。
おまえ変わったなぁ。全然地底人って感じじゃないよ。
もうそんな時代じゃないでしょ。ちゃんと参政権だってあるんだからさぁ。
SF大学の時と言ってること180度変わってるじゃん。
あの頃はどれだけ泥まみれになれるかに必死だっただろ。
子供だったんだよ。
どーしたの。そのスーツ?
何か変?
凄い御洒落じゃん。
そう?普通だよ。
ずっと茶色いパーカーしか着てなかったじゃん。
仕事帰りなんだよ。仕事にパーカーじゃいけないだろ。
香水なんかつけちゃって。
何?臭い?
いや別にそんなことはないけどさ。
君の方はどうなの仕事。順調?
俺?俺は今、失業中。
クビ?
まぁそんなところ。上司とやりあっちゃってさ。給料がね。上がらないんだよ。
どこもそうでしょ。
違うよ。俺が宇宙人だからだよ。
えー?今時珍しいね。
そいつがさ。根っからの地上人なんだよ。
いまだに宇宙人に侵略されると思ってるわけ。
そいつ、古いね。
そう。古いよ。時代遅れもいいとこだ。
二人は笑う。
君は変わってないね。
まぁそれなりに宇宙人の誇りっていうの?あるから。
たぶんそれが気に入らないんだよ。
でも仕方ないじゃん。俺は誰が何といおうが宇宙人なんだから。
君さ。以前にも増して、顔色、銀色だね。
うん。毎朝、磨いてるんだ。君はあれだな。
すっかり地上人の顔だ。昔はもっと顔面を泥だらけにしてた。
まぁ社会人としてね。泥だらけはやっぱりまずいことに気がついちゃったんだよ。大丈夫?その顔色で?宇宙人の人権が認められてるといっても再就職厳しいだろ。
やなこというなよ。俺は絶対に君みたいに迎合したりしないよ。
別に迎合してるわけじゃないよ。
じゃあ君のその清潔さはなんだ。
これは身だしなみの問題だ。
・・・ならいいけど。
で、何?話って?
・・・うん。実はね。今、俺、ある組織に入っていてさ。広い場所を探してるんだ。
組織?何の?
うん。もう一度地上侵略をしようかと思ってて。
・・・さっき言ったこと撤回する。時代遅れは君の方だ。
いいから聞いてくれ。爆弾を大量生産する場所がほしいんだよ。
地底にならいくらだってあるだろ?
ないよ。地底世界は地上人に降伏して以来、
すべて埋められたのは君だって知ってるはずだ。
今時の地底人はみんな、地上暮らしだよ。
じゃあこの土の匂いはなんだ?
え?
いくら香水で誤魔化したって駄目だよ。君からはまだ土の湿った匂いがする。
・・・俺はもう地底人はやめたんだ。
なぁ。もう一度、地上侵略やってみないか?
地底人と宇宙人の時代を今度こそ築くんだよ。
ごめん。今度俺、地上人と結婚するんだ。帰化するんだよ。
・・・そうか。
・・・もう行くよ。
Kが立ち上がる音がする。
ちょっと待て・・・おめでとう。
ありがとう・・・地上侵略、楽しみにしてるから
Kはファミレスを出ていきSは席に取り残される。
終わり