- 近所のファミレスにて。
- S
- おまえ変わったなぁ。全然地底人って感じじゃないよ。
- K
- もうそんな時代じゃないでしょ。ちゃんと参政権だってあるんだからさぁ。
- S
- SF大学の時と言ってること180度変わってるじゃん。
あの頃はどれだけ泥まみれになれるかに必死だっただろ。
- K
- 子供だったんだよ。
- S
- どーしたの。そのスーツ?
- K
- 何か変?
- S
- 凄い御洒落じゃん。
- K
- そう?普通だよ。
- S
- ずっと茶色いパーカーしか着てなかったじゃん。
- K
- 仕事帰りなんだよ。仕事にパーカーじゃいけないだろ。
- S
- 香水なんかつけちゃって。
- K
- 何?臭い?
- S
- いや別にそんなことはないけどさ。
- K
- 君の方はどうなの仕事。順調?
- S
- 俺?俺は今、失業中。
- K
- クビ?
- S
- まぁそんなところ。上司とやりあっちゃってさ。給料がね。上がらないんだよ。
- K
- どこもそうでしょ。
- S
- 違うよ。俺が宇宙人だからだよ。
- K
- えー?今時珍しいね。
- S
- そいつがさ。根っからの地上人なんだよ。
いまだに宇宙人に侵略されると思ってるわけ。
- K
- そいつ、古いね。
- S
- そう。古いよ。時代遅れもいいとこだ。
- 二人は笑う。
- K
- 君は変わってないね。
- S
- まぁそれなりに宇宙人の誇りっていうの?あるから。
- K
- たぶんそれが気に入らないんだよ。
- S
- でも仕方ないじゃん。俺は誰が何といおうが宇宙人なんだから。
- K
- 君さ。以前にも増して、顔色、銀色だね。
- S
- うん。毎朝、磨いてるんだ。君はあれだな。
すっかり地上人の顔だ。昔はもっと顔面を泥だらけにしてた。
- K
- まぁ社会人としてね。泥だらけはやっぱりまずいことに気がついちゃったんだよ。大丈夫?その顔色で?宇宙人の人権が認められてるといっても再就職厳しいだろ。
- S
- やなこというなよ。俺は絶対に君みたいに迎合したりしないよ。
- K
- 別に迎合してるわけじゃないよ。
- S
- じゃあ君のその清潔さはなんだ。
- K
- これは身だしなみの問題だ。
- S
- ・・・ならいいけど。
- K
- で、何?話って?
- S
- ・・・うん。実はね。今、俺、ある組織に入っていてさ。広い場所を探してるんだ。
- K
- 組織?何の?
- S
- うん。もう一度地上侵略をしようかと思ってて。
- K
- ・・・さっき言ったこと撤回する。時代遅れは君の方だ。
- S
- いいから聞いてくれ。爆弾を大量生産する場所がほしいんだよ。
地底にならいくらだってあるだろ?
- K
- ないよ。地底世界は地上人に降伏して以来、
すべて埋められたのは君だって知ってるはずだ。
今時の地底人はみんな、地上暮らしだよ。
- S
- じゃあこの土の匂いはなんだ?
- K
- え?
- S
- いくら香水で誤魔化したって駄目だよ。君からはまだ土の湿った匂いがする。
- K
- ・・・俺はもう地底人はやめたんだ。
- S
- なぁ。もう一度、地上侵略やってみないか?
地底人と宇宙人の時代を今度こそ築くんだよ。
- 間
- K
- ごめん。今度俺、地上人と結婚するんだ。帰化するんだよ。
- S
- ・・・そうか。
- K
- ・・・もう行くよ。
- Kが立ち上がる音がする。
- S
- ちょっと待て・・・おめでとう。
- K
- ありがとう・・・地上侵略、楽しみにしてるから
- Kはファミレスを出ていきSは席に取り残される。
- 終わり