- 十一月になって、二人は、今それぞれ別の道を歩いている。
女は河川敷を。男は住宅街を。二つの足音。散歩。
散歩をする時。人は考える。思いをはせたりもする。別の場所を散歩する二人のそれ(思い、考え)がたまたま重なったりテンポが合う事は、(確認しようがないけれど)実はよくあることなのではないだろうか?恋人同士であった女と男なら尚の事・・・
- 女
- 川。の流れ。鳥の鳴き声。足音。テンポよく。地面を踏んで。芝生。時々休んで。ベンチ。読書。自転車。テニスコート。
- 男
- モデルハウス。坂道。スケートボード。
- 女
- ゲートボール。
- 男
- ガードレール。
- 女
- 立ち入り禁止。
- 男
- カーブミラー。
- 女
- 「芝生養生中」「球技禁止」「広域避難所」
- 男
- 校舎・・・小学校?・・・。
- 学校のチャイムが鳴る。休み時間。子供達の声。
- 男
- (笑)歓声。幼さ。の、正しさ。
- 女
- 石碑に刻まれた
- 男
- 「友愛」
- 女
- 友情と
- 男
- 郵便ポスト
- 女
- 愛情と
- 男
- 屋上の洗濯物。黄色いTシャツ。
- 女
- 黒いスパッツ。ランナーのサングラス。あなたの横顔。十一月の風。
- 風が舞い上がる。二人の「思い」をさらって過去へと運んでいく。
- 男
- 室外機、電信柱
- 女
- 高く・・・
- 男
- ヘリコプター
- 女
- 雲
- 男
- 音
- 女
- 足
- 男
- 右足
- 女
- 左足
- 男
- 右足
- 女
- 左足
- 男
- 右手
- 女
- 左手
- 男
- 手袋は
- 女
- 外して
- 男
- つないで
- 女
- いた
- 男
- はず
- 間
- 女
- れた
- 男
- 金網。公園の真ん中の水銀灯の
- 女
- 光
- 男
- 影
- 女
- 滑り台と私とあなたと
- 男
- 暗がりと
- 女
- ソレガセカイノスベテデ
- 男
- ナイロンのこすれる音。カサカサのクチビル。
- 女
- シンパクスウ。
- 男
- 真っ赤な、・・・。真っ赤な、ナンテンの実。
- 風はカサカサとナンテンの葉をゆらし、そしてまたどこかに消えて行く。
- 男
- ひらひらと。
- 女
- てのひらを。
- 男
- うん。
- 女
- 私は。大きく手を振る。
- 男
- 手を振る。テンポってもんが重要だ。
- 男女
- 右足。左足。右足。左足。右手。左手。手袋は。外して。
- 男
- 酒屋の前の自動販売機。
- 女
- 対岸。トランペットの音色。かっくい?・・・
- 男
- 「あったか?い」(自販機のボタンを押す)
- 女
- 川原。たき火のあと。まぁるい石ころ。
- 男
- 図書館へと続く道。・・・(笑)に、どっからかカレーの匂い・・・
- 女
- せせらぎ。ささやき。
- 男
- 桜並木は春を待っている。
- 女
- を聞きながら。
- 男
- 桜並木は春を待っている。
- 女
- 時たま思い出したりしながら。
- 足音。男女はそれぞれ別の道を歩いてゆく。
- 終り