- 海岸
波の音
クレヨンを食べる音
そこにマイクの声が被る(広い会場で講演をしているような響き)
(※そのマイクの声を男Nと表記します。男Nと男は同一人物です)
- 男N
- 私が海岸に出ると、一人の女性がいました。何かを食べていました。
近づいて見てみると、その女性は、クレヨンを食べていました
- 女
- (食べるのを中断して)…何ですか?
- 男
- …やめた方がいいんじゃないですか?
- 女
- 何をですか?
- 男
- クレヨン。お腹壊しますよ
- 女
- クレヨン食べてお腹壊したことあるんですか?
- 男
- ないです。クレヨンを食べたことがないです
- 女
- …あなたは、何をしているんですか?
- 男
- 僕は船を探しています
- 女
- 海の向こうに行きたいんですか?
- 男
- はい。あなたも?
- 女
- はい
- 男N
- 彼女は美人でした。しかも、海の向こうに行きたいという同じ夢を持っていました。
つまり、私のタイプでした。クレヨンさえ食べてなければ
- 女
- あなたも一本どうですか?
- 男
- えっ?
- 女
- どれでも好きな色
- 男
- いや、僕は…
- 女
- 船を待っていても、いつ来るか分かりませんよ
- 間(波の音)
- 男
- ちなみに、何色が一番美味しいの?
- 女
- 黒色です
- 男
- 黒色…でも、全然黒色食べてないよね
- 女
- 今は食べません
- 男
- 何で?
- 女
- 虹を作るから。黒色を食べると虹が真っ黒になっちゃうフフフ
- 男N
- あー、違う生き物だなって思いました。
しかし、ココで逃げていたら、今の私はないんですよ
- 男
- 虹を作るって、どういうこと?
- 女
- 七色(ななしょく)のクレヨンを食べて虹のうたを歌うと、虹が出来るんじゃないかなーって。その虹を渡ったら海の向こうに行けるんじゃないかなーって
- 男
- …え?
- 女
- 一緒に、どうですか?
- 男
- …虹を作るんですか?
- 女
- 私も色々考えたんです。ココで船が来るのを待つか、自分で船を作るか、自力で泳いで行くか。でも、私は虹を作ってみることにしたんです
- 男
- …僕にも、作れますかね
- 女
- 一緒にクレヨン食べて虹のうたを歌いましょう!
- 男N
- 歌いましょう!って。可愛い声で言うんですよ。クレヨン、食いましたよ。七色。まあ、健康のためには、一日三食がいいんだろうけど(←この男なりのジョークです)、七色食いましたよ。虹のうたも、幸せな気分になるメロディーで。すぐに覚えて歌いました。するとねえ、口の中から、マア綺麗な虹が、出たんですよ
- 虹のうたを歌う男女
唄声と共に口から綺麗な虹が出る
虹のうたのメロディーはメンデルスゾーンの結婚行進曲
歌詞は♪ラララ時々♪ランランでメロディーに合わせて
- 男N
- 私たちは、虹の上をザクザク歩きました。最初のうちはねえ、これは本当に夢に向かっているんだろうか、クレヨン食って死んでしまったんじゃないか、それはマア、赤から紫まで思考がグルグルしましたよ。でも、そんな中、心強かったのは、違う生き物が隣にいたってことです。これは間違いないです。あっ、そろそろお時間ですか
- ボタン一つですべての音が消える
そして、液晶スクリーンが収納される音
VTRを見ながら講義をしていたようだ
- 男N
- えー、皆さん、私の拙い講義を最後まで聞いていただき、ありがとうございます。最後に質問がありましたら、遠慮なくどうぞ。お茶菓子も、どうぞ食べて下さい。残っても困りますから。特にね、黒色が旨いんですよ
- 終わり