- 少し、未来のお話。
若い夫婦が幼い息子の寝顔を見ながら、こそこそと話しをしている。
- 妻
- ぐっすり眠ってるみたいよ
- 夫
- けどなぁ
- 妻
- だって心配だもの
- 夫
- それはまぁ
- 妻
- なによ、あなたは可愛い一人息子のことが心配じゃないっていうの?
- 夫
- そうは言ってないだろう
- 妻
- じゃあどうして反対するの。ちょっと<繋ぐ>だけじゃない
- 夫
- ちょっと、って、まぁそりゃそうなんだけどな
- 妻
- ・・あなたってばここぞというときに限ってハッキリしないんだから
- 夫
- そんなこと言うなよ。ただ・・安易に<繋ぐ>のもどうかと思ってさ
- 妻
- 安易じゃないわよ。小学校から泣いて帰って来た息子を想う親心じゃないの
- 夫
- 親心=<繋ぐ>ことになるのか?
- 妻
- ほんとあなたったらアナログ人間なんだから。
<繋ぐ>ことは一番合理的なコミュニケーションよ。覚えてる?わたしとあなたが出逢ったとき、お互い何も知らない同士だったけど、二人で同意して<繋ぐ>ことで、生まれてから小中高、大学どんな人生を送って来たか手に取るようにわかったから、安心してお付き合いが始められたんじゃないの
- 夫
- ほんと昔の彼女の履歴を消したあとで良かったよ
- 妻
- 何か言った?
- 夫
- そうだ!こいつが起きてるときにさ、きちんと話して、そう、同意のもとで<繋ぐ>ってのはどうだ?
- 妻
- しーっ!大きな声ださないでよね。起きちゃうじゃないの
- 夫
- ああ、ごめんごめん
- 妻
- あなた聞いてた?この子が話したがらないから<繋ぐ>しかないわね、って話しになったんでしょ
- 夫
- ああそっか
- 妻
- もう、あなたったら・・そりゃ、わたしだって本当はこの子の口からちゃんと聞きたいわよ。けどね、普段は大人しいくせに強情なところだけ誰かさんに似ちゃって
- 夫
- いいじゃないか。強情ってのは裏を返せば、自分の意見をちゃんと持ってるってことだ
- 妻
- とにかく親権者なんだから、同意がなくても<繋ぐ>ことに法律上なにも問題はないわ
- 夫
- いや、だけど<繋ぐ>としてさ、もしこいつが泣いて帰ってきた原因が分かって、それが苛めとかだったらどうするつもりだ?
- 妻
- そりゃ学校に殴り込んで、苛めた子たちをこてんぱんにやっつけてやるのよ
- 夫
- やっつけて・・って、そりゃまずいだろう
- 妻
- 冗談よ。だけどなにか力になってあげたいじゃない
- 夫
- こいつ自身の問題だよ
- 妻
- なによ。冷たいわね
- 夫
- そうじゃなくって本当に親の力が必要になったら、そのときは話してくれるさ。
こいつも頼りっぱなしの小さな子どもから、一人前の男にちょっとずつ成長しようとしてるのかもしれないぞ。頼もしいじゃないか。信じてやれよ
- 妻
- だけど・・
- 夫
- 覚えてるか?俺たちが心を通わせる様になったのは、あちこち遊びに行ったり、一緒にご飯を食べたり、時間をかけてお互いを本当に知ることができたからだ
- 妻
- ・・あなたったらデートといえば動物園だったわ。
動物なんていつでもネットで野生のをみれるのに
- 夫
- 悪かったね、アナログ人間なんだ
- 妻
- まぁたまには、アナログも悪くないですけどね
- 夫
- 週末久し振りに行こうか。お弁当持ってあの頃みたいにさ。
今度は、3人で手を繋いで
- END