雨が降りしきる音。
男、窓をがらりと開ける。
いい、お天気になりますように。
雨は止まない。
・・・・・・いい、お天気になりますように!
雨はやまない。変わりに雨音が増す。
(力なく笑い)3度目の正直ね・・・・・・いいお天気になりますように!!
どっと雨が勢いをます。
雷が轟く。
男、慌てて窓をピシャリと閉める。
この通り・・・・・・「晴れ男」じゃないんだよね、もう。
でも・・・・目の前で・・・・・雨がサーッと引いて、パーっと空がこう晴れて。
それが・・・・・・あの後から、さっぱり
でも・・・・・・・・・・・どうして?
なんでかなあ・・・・・・・まあ、「晴れ男」じゃなくなっても別に困らないし。
私は・・・・・・・・困ります!
みたいだねえ・・・・・・・・。
こんなことになるなら・・・・・・・・なんで思っちゃったんだろう。
雨が降ればいいとか・・・・・・・全然止んでくれないし・・・・・。
「雨女」に生まれてきちゃうなんて・・・・・・・もう、ついてないです。
ほんと大袈裟だな・・・・・・・っていうか「雨女」って本来の意味、違うでしょ。
大事なイベントに限って雨が降るから言われる、あれでしょ。
思っただけで・・・・・・・・雨が降るって、そんな。
先輩・・・・・・・人のこと言えますか?
そうだけど・・・・・・・僕のは「個性」、君はただの「思い込み」だよね?
(無視して)もう・・・・・・このまま雨が振り続けたらどうしましょう。
街が水浸しになって・・・・・溢れて隣町に浸水して・・・・・そのまた隣町へ。
そして・・・・・そのまた隣町へ・・・・まるで洪水のドミノ・・・・・世界中に水が溢れかえってしまって・・・・・・・・。
ね・・・・・・・人の話聞いてる?
先輩・・・・・・・お願いです、早く良くなって元の「晴れ男」に戻って下さい。
ええ・・・・・・そんな人を病気かなんかみたいに。
このままじゃ・・・・・・世界の終わりです。
ええ・・・・・・そんな十字架背負わされたくないよ。
この雨が・・・・・うっかりでも降ればいいと、思ったんなら君のせいだよね?
そ・・・・・・・・・そうです。
なんで・・・・・・雨が降ればいいと思ったのか。
それが解決すれば・・・・・・案外、雨が止む日も近いんじゃないかな。
なるほど。
で?
えっ・・・・えーと・・・・・・その・・・・・・秘密。
世界・・・・・・・終わるね。
ええっ・・・・・・・酷いですよ。
じゃあ・・・・・君の話、聞かせてもらおうか。
虹を・・・・・・・・見たかったんです。
・・・・・・・え?
なんか・・・・・・うまく言えないんですけど、ほら私・・・・仕事も失敗するし恋愛も上手くいかなかったり・・・・・・好きな人に告白も出来ないし、よく何もないのに転んだり・・・・・とにかく不器用で・・・・・何もないまんま、ぼんやり毎日終わるのかななんて・・・・・思ったら、小さい頃見た虹を・・・・・思い出しちゃって。
恥ずかしいんですけど・・・・・・・だから・・・・・・その。
それで・・・・・・雨・・・・・・・・降ればいいなあって?
だって・・・・・・雨上がりに見れるものだし。
でも・・・・・・・・・・雨ずっと止まないなんて思わなくて・・・・・・虹も見れないし。
先輩にも頼れないし・・・・・・・どうしたらいいんでしょうか。
問題を解決する前に・・・・・・雨がやまないと、まず解決しないんだ。
はい・・・・・・・。
ねえ、見れるとして虹・・・・・・・誰と一緒に見たい?
え?
今なら出来そうな予感がするから・・・・・好きな人と見るんなら何とか調整出来るようにしてみるし。
あの・・・・・・先輩。
やったことないけど・・・・・頑張ってみるよ。
今すぐ・・・・・・・お願いします。
え?
先輩と・・・・・・一緒にみたいですから。
男、勢い良く窓ガラスを開ける。降り続く雨。
いい・・・・・・・・・お天気になりますように。
雨が止んだ。
わあ・・・・・・すごい!
・・・・・・・でしょ。
2人、窓の外の向こうにかかる虹を見ている。
終わり