地底人兄妹の住む土の一角。
マリコと兄ちゃんは炬燵に入っている。
兄ちゃんは雑誌を読み、マリコはなにやら唸っている。
マリコ
ううーううー
兄ちゃん
うるさい。
マリコ
ううーううー
兄ちゃん
うるさい。
マリコ
うう~
兄ちゃん
うるさい言うとるやろ!兄ちゃん、今、メンズノンノ読んでるねん!
マリコ
兄ちゃん。寒い~
兄ちゃん
当たり前や。今、冬やぞ。てかおまえ、炬燵入って何を言うてんねん。
マリコ
兄ちゃんが昨日拾ってきたこの炬燵、やっぱり壊れてうよ。
兄ちゃん
なんで?めっちゃ温いやんか。俺、こんな温い炬燵、入ったことないで。
マリコ
えーでも炬燵の中、全然赤くなってないやん。
兄ちゃん
おまえ、アホやなぁ。ホンマにアホやなぁ。
マリコ
ウチ、アホちゃう。
兄ちゃん
ええか?炬燵いうんはな。色々な使い方があるんや。地上人のやつらで今、流行ってる炬燵の使い方、おまえ知らんやろ?ええか?今、一番オシャレな炬燵の使い方いうんはな、炬燵の下にホットカーペットを敷くねんで?これ地上じゃもはや周知の事実ねんで?
マリコ
何?ホットカーペットって。
兄ちゃん
温い絨毯や。つまりこうや。温い絨毯の上に炬燵を載せることにより、温い絨毯から発せられる温い空気が炬燵内の冷たい空気を温い空気にすうねん。つまり炬燵の電源入れずとも炬燵は温い温いになるねんか?わかうか?マリコ?これなんや?せや。エコロジーやないか。今どきの地底人たるもの、エコにも目を向けていかなあきゃんねん。
マリコ
でも兄ちゃん。ちょっと待って。ホットカーペットはどうやって温くなるの?
兄ちゃん
電気や。
マリコ
じゃあ結局はエコちゃうやん。電気使ってうやん。
兄ちゃん
甘い。甘い。マリコ甘いわ。これからおまえはホンマに・・・もっと地底人の自覚を持てぇ!よう考えろ!!地底人にとってのホットカーペット。それはなんや?
マリコ
それは!!・・・なんや?
兄ちゃん
土やないか!!見て。マリコ、炬燵の下見て!
マリコ
これは・・土や!
兄ちゃん
せや!!地底人にホットカーペットはいらんねん。なぜなら土があるからや!土とはすなわち、地球の中心で煮えたぎっているマグマを包む柔らかい毛布やないか。あは!あは!!あははははははは!!
兄ちゃんは笑い転げる。しかしマリコは冷静な様子。
マリコ
でもこの土、全然温くないよ
兄ちゃん
え?うん。せやな。あはははは!!まぁここはマグマから程遠いしな。しゃーないで。
マリコ
なんや。やっぱり温いないんや・・・
兄ちゃん
マリコよ。それは心の持ちようやで。心頭滅却すれば火もまた涼しっていうやろ。あれ?ちゃうかったか?要はあれや。壊れた炬燵でも入ってたら、なんか温い気がしてくるちゅーこっちゃで。あ。ミカン食うたろ。
マリコ
ううー。全然意味わからん。ちゃんとした炬燵ほしいー。なぁなぁ兄ちゃん。今度、地上のヨドバシカメラに炬燵買にいこうや!
兄ちゃん
(ミカンを食べながら)あほ!!地上なんか出てみろ!!即座に地上人たちに捕まってまうで!!
マリコ
大丈夫やって。
兄ちゃん
そういうやつが一番危ないねん。アホ言うてへんで。おまえミカン食え。甘いぞ。
マリコ
ホンマに?
二人はモソモソとミカンを食べ始める。
「ホンマや。甘い」とか「なんやこのミカン、イチゴみたいな味がする」とか物凄くいい加減な会話をしている。
するとマリコが異変に気が付く。ゴゴゴゴゴ・・・・
と何が近づいてくる音。
マリコ
ちょっと兄ちゃん。なんかホンマに温くなってきてへん?
兄ちゃん
だから要はこころの持ちようやなねんて。(誇らしげに)マリコおまえも大人なったな。
マリコ
それに何?この音。なんかどんどん近づいてきてう・・・
兄ちゃん
ああ。おまえは大人に近づいたで・・・あれ?なんやこれ?
すると兄ちゃんの足が何か触れた。
兄ちゃん
熱(アツ)!!!!
マリコ
熱(アツ)!!!!
二人は「なんじゃこりゃ!!」とかいいながら大騒ぎする。
何かが噴火する音。
ドッカーン!!

テレビの画面。そこにはニュースキャスターが映っている。
キャスター
大変なことになりました!!地球の中心で眠っていたマグマの一部が、地底の隙間から地上に漏れ出した模様です。
おかげで今、大阪付近の気温は真冬から一気に真夏へと逆戻りしてしまい、住民たちに動揺が広がっています。
テレビを見ながらマリコはパンツ一丁でゴロゴロしている。
兄ちゃんはミカンを食べている。
マリコ
兄ちゃん。暑い~
兄ちゃん
うるさい。暑い言うたら余計暑くなるやろ。
マリコ
兄ちゃん。ヨドバシにクーラー買いに行こうやぁ。
兄ちゃん
あきゃん。
マリコ
えー
終わり。