- 高らかに鳴り響く、熱い戦闘シーンにぴったりな音楽。
- 男
- 俺達の熱い気持ちをぶつけるんだ!
行くぞ!必殺技!ブリザードハリケーン!を!
ブルー!グリーン!イエロー!ピンク!
- 音楽、盛り上がろうとするところでブチッと止まる。
- 男
- え・・・・・いいとこだったのに。
- 女
- さっきから、そこばっかり練習してますけど・・・・・必殺技とか、無理があります・・・・・・・2人しかいないのに。
- 男
- でも重要な見せ場じゃない・・・・・・・っていうか、どうして僕たちだけなの?
かれこれ1時間経っても・・・・・皆、来ないし。
- 女
- ・・・・・・来ません。
- 男
- え、どうして?
- 女
- あの・・・・・今、何月か分かってるんですか?
- 男
- え・・・・・・・・12月でしょ・・・・・今?
- 女
- そうです・・・・・・・・。
- 男
- え?・・・・・・・・ええ?
- 女
- もう・・・・・12月と言ったら師走・・・・・・の前にクリスマス!
イベント盛りだくさんだけあって、皆・・・その為のバイト行ってくるって。
- 男
- ええっと・・・・・・・分かるよ・・・・・・・そういうのも・・・・・・・・・。
だからって・・・・・よい子の為のクリスマスお楽しみ会、もうすぐだよ?
中途半端には出来ないし・・・・・・まいったなあ。
- 女
- ・・・・・・・聞いていいですか?
- 男
- 何、改まっちゃって・・・・・・どうぞ。
- 女
- 普通、クリスマスの出し物ってキリスト生誕劇とかでしょ・・・・。
なんで・・・・・ヒーローショーもどきなんですか?
- 男
- もどきって・・・・だから・・・・・・・よい子の為の・・・・・・・・
- 女
- (遮って)それはいいです、春休みだって・・・・夏休みだって・・・・・・ヒーローもの、やったじゃないですか!
- 男
- いつも、同じヒーローじゃないでしょ。
- 女
- そうですけど・・・・・・・・トナカイレンジャーってなんですか。
悪の化身、サンタワルースとか・・・・・意味わかりません。
よい子の皆・・・・・・泣いちゃいますよ。
- 男
- ちょっと、たまにはパンチがきいて、いいかなあって思ったんだけど。
- 女
- ・・・・・きかせなくていいです。
- 男
- だよねえ・・・・・・・ごめん。
- しょげかえる男。少し間。
- 女
- (少し笑って)ホント好きなんですね、ヒーロー。
- 男
- まあ・・・・・ね。
だからって、ちょっとやりすぎだよね・・・・・やっぱり。
面白いかなあって・・・・・やってみたら子供達喜んでくれて・・・・・それで、つい調子に乗っちゃって。
でも、本当は・・・・・・僕が一番、子供なのかも。
- 女
- え?
- 男
- 小さいときから、ヒーローに憧れてたんだよね。
ヒーローのベルト欲しくってさ、それで変身出来るんだって。
クリスマス、サンタさんに「ベルトを下さい」ってお願いしたら、何故かジグソーパズルでさ・・・・・正直、恨んだよね。
- 女
- だから・・・・・・サンタワロースですか?
- 男
- まあ・・・・・・ね。
ジグソーパズルで頭が良くなったらかっこいい大人に変身出来る!
なんて親は言い聞かせてたけど・・・・・・大人になってもかっこわるいし。
やっぱり・・・・・・ヒーローに憧れてる子供のままなんだよね。
かっこわるい・・・・・よね。
- 女
- ・・・・・・・練習、しましょうか。
- 男
- うん・・・・・・でも、台本考え直さないと。
- 女
- そうですね・・・・・とりあえず「サンタワロース」はやめましょう。
- 男
- え?
- 女
- クリスマスのプレゼントを悪者から守る、ヒーローって、どうですか?
- 男
- ・・・・・いいね、サンタレンジャーとか!
- 女
- わあ!・・・・・・・あ、ちょっと待って!
- 男
- え?
- 女
- サンタレンジャーだと、全員「レッド」になっちゃう。
- 男
- あ・・・・・・・・・・本当だ。
- 2人思わず笑い出す。
- 終わり