- そこはジャスコの2階。まり子はキョロキョロしている。
- ○○○○○
- よう。
- まり子
- よよ!
- ○○○○○
- 初めてあった気がせーへんねんけど、俺のことを覚えてる?
- まり子
- は!ウチも初めて会った気がしない。
- ○○○○○
- 名前をおしえーてやお嬢さん。
- まり子
- ウチまり子。5歳ねん。
- ○○○○○
- まり子・・・まり子か。遠い昔、そんな女を愛した気がすう。
- まり子
- ほえー。
- ○○○○○
- 何?俺がいくつかって顔やな。
- まり子
- ほえ?
- ○○○○○
- いやそういう顔や。教えたる。俺に年齢はないねん。
- まり子
- 自分、「いくつ」ないの?ほなったら誕生日は?
- ○○○○○
- とうの昔に忘れてもうたわ。
- まり子
- 誕生日忘れたら何にももらえへんよ?
- ○○○○○
- ハードボイルドとはそういうもんや。
- まり子
- ハードゲイって何?
- ○○○○○
- なんでやねん。まり子。ハードゲイちゃうぞ。ハードボイルドや。つまり孤独って意味なんや。
- まり子
- コドクって何?
- ○○○○○
- 夜、一人ぼっちで布団に入ることねんで。
- まり子
- ええ!ウチ、そんなん絶対無理や。お母ちゃんおらんと泣いてまう。
- ○○○○○
- 俺はいつでも泣いてうよ。枕もすっかりカビ臭くなってもうた。
- まり子
- (気の毒そうに)お母ちゃんおらへんの?
- ○○○○○
- 遠いところにおる。
- まり子
- (同情して)会えへんの?
- ○○○○○
- いつでも会えんねん。
- まり子
- (嬉しくなって)ほな会いにいったらええやん!
- ○○○○○
- そうはいかへん。それが俺の生き方やねん。孤独に涙し、煙草をふかし、太陽から逃げるように生きていく。くそ。ニコチンが切れてきたわ・・・
- まり子
- バフー!!!(笑いだす)
- ○○○○○
- な!何がおかしい?
- まり子
- むふぅ。自分、今、嘘ついたな!ウチわかったもん!
- ○○○○○
- 嘘はついてへんぞ!俺はハードボイルドや!
- まり子
- だって自分マックロクロやんか!めっちゃ日焼けしてうやん?
- ○○○○○
- これは体質じゃ!
- まり子
- でもこの前ウチ海行った時、自分みたいなのたくさんおったで。めっちゃ海パン履いてたねんで。
- ○○○○○
- やめて。ほんまやめて。俺はあんな軽薄な奴らとはちゃうねん。夏でもトレンチコートを纏うねん。奴らと違って孤独ねん。ハードボイルドの名にかけて今からそれを証明したる・・・まり子、俺をかけてみぃ。
- まり子は○○○○○をスチャっとかけてみる。
するとまり子の前に大きな宇宙が広がる。
- まり子
- うわー!!
- ○○○○○
- どや?綺麗やろ・・・?
- まり子
- お星様がいっぱいやぁ・・・
- ○○○○○
- 一番綺麗な星が見えうか?
- まり子
- うん・・・
- ○○○○○
- あれな。俺の・・・お母ちゃんねん。
- まり子
- え?
- するとまり子は急に泣きたくなる。
- まり子
- うう・・・ぎゃーん!!お母ちゃんお母ちゃん。うわーん!!
- すると母親がやってくる。
- 母親
- はーいはーい。どないしたん?あ。大きなサングラスして。あんた松田勇作みたいやなぁ。
- まり子
- 寂しいおう。寂しいおう。
- 母親
- お母ちゃん、ずっとそこにおったやんか。いい眼鏡なかったわ。
- まり子
- ウチ、ハードボイルドなんかになりたくない。
- 母親
- (笑って)あほ。あんたみたいな泣き虫はハードボイルドになれへんわ。
- 終わり。