激しい雨が降っている
トンネルの中に祖父と少女(マコ)
祖父
いやあ、すごい雨だねえ
少女
おうち、帰れるかなあ
祖父
コレで頭拭きなさい
少女
(タオル貰って)ああ、鼻、冷たい
祖父
このトンネル通って帰ろうか
少女
…暗いよ?
祖父
懐中電灯がある
少女
…行こ
歩き始める祖父と少女
少女
おじいちゃんの手、冷たい
祖父
(苦笑して)おじいちゃんだから
少女
おじいちゃんは、手、冷たいの?
祖父
雨が降ってきたから
少女
うん。マコも冷たい
歩いている祖父と少女
雨の音は遠ざかっている
祖父
学校は、楽しいか
少女
…うん…楽しいよ
祖父
悪い男の子はいないか?
少女
…いない
祖父
おお
少女
ちょっといる
祖父
いるか
少女
いる
祖父
おじいちゃんが助けてあげようか
少女
…大丈夫
祖父
(苦笑)
少女
無視してるから
祖父
(笑う)
少女
無視するのが一番いいんだよ?
祖父
おじいちゃんもね、昔、女の子によく無視されたんだよ
少女
…おじいちゃん、悪い子?
祖父
好きだったんだよ。その女の子が
少女
…?
祖父
(笑って)(咳き込む)
少女
…しんどい?
祖父
ううん、平気
少女
マコが助けてほしい?
祖父
ありがと。マコちゃんは優しいね
少女
優しくないよ?
祖父
マコちゃんは…5歳か
少女
6歳
祖父
6歳か
少女
おじいちゃんは?
祖父
86歳
少女
すごい
祖父
(笑う)
少女
元気?
祖父
元気だよ?
少女
うん
歩いている祖父と少女
雨の音はすっかり消えている
祖父
マコちゃん
少女
祖父
トンネルはね、全部どこかに繋がっているんだ。雨が降ったら、入りなさい。そのトンネルがどれだけ長いかは分からないけどね。出口まで歩いたら、きっとやんでるから。でも、もし、入ったトンネルが行き止りだったら、その時はね、喜びなさい。まだ誰も入ったことのないトンネルだからね。ゆっくり掘り進めばいいんだよ? それで、しんどくなったら、引き帰したらいい。優しい子でいたら、きっと、誰かが待ってくれてる
少女
…どういう意味?
祖父
(笑って)分からない?
少女
うん
祖父
それは、マコちゃんが幸せってこと
少女
…うん。おじいちゃんは? 幸せ?
祖父
…あ、出口だ
少女
あっ。光ってる~
祖父
ああ、走ったら危ないよ
少女
出口~
祖父
急いだらつまづくから、ゆっくり行きなさい~