- 寝入りばな、女はなにかを思い出し目を開いた。
- 女
- あ。
- 男
- ん?
- 女
- 天気予報見るの忘れてた。
- 男
- 天気・・・。
- 女
- わかる?
- 男
- んー、雨だったか曇りだったか。
- 女
- そりゃまずい。
- 男
- せっかくいい感じでウトウトしてたのに。
- 女
- ごめん。確認しときたいの。
- 男
- 明日、なんかあったけ?
- 女
- 結婚式。
- 男
- 友達の?
- 女
- ううん。
- 男
- 誰、芸能人?
- 女
- 私の。
- 男
- え?
- 女
- なーんて。へへへ、ビックリした?
- 男
- いや、意味わかんなかっただけ。
- 女
- 早く嫁にしてくんないと、知らないぞー。
- 男
- って言われても、まだ、見習い中の身分だしなぁ・・・。
- 女
- うちの父さんさ、ヨシオ君は、石橋を叩き過ぎて、叩き割ってしまうようなトコがあるからって心配してた。
- 男
- 明日、誰の結婚式なの?
- 女
- 今日、カットに来たお客さん。
- 男
- あ、そう。
- 女
- (携帯で調べ)あ、やっぱ雨っぽい。88%ってビミョーに望みあり?
- 男
- 88、末広がりな。
- 女
- ほんとだね。
- 男
- 石橋、叩き割るか・・・。
- 女
- 時間差で落ち込むなよ。
- 男
- 大学院まで行ったのに、結局、違う仕事に就くことになっちゃったしさ・・・。
- 女
- 私、実はよくわかんなくなってさ。
- 男
- 俺のこと?
- 女
- え、違う違う。やだもう何心配してんのよ。
- 男
- いや、ははは。
- 女
- 私もね、ヨシオと同じで、結婚するからには、いろいろ目処がたってからでなきゃって思ってんだけど。明日、花嫁になるってお客さんってさ、79歳のおばあちゃまなの。
- 男
- うそ、まじで?
- 女
- タイミングを図っているうちに、恋人と生き別れてしまって、再会した時にはもう互い家庭があったんだって。だから、いつかの未来、二人が夫婦になっても悲しむ人が居ない状況になったならば、結婚しましょうって約束したんですって。それが明日、
- 男
- 叶うわけだ。
- 女
- 60年かかったって。
- 男
- ほとんど奇跡だ。
- 女
- ・・・たとえそれが一瞬の晴れ間だとしても、信じて歩きだすのよって。
- 男
- 言われたの?
- 女
- 言われたのか、言い聞かせてたのか・・・だから、明日は晴れて欲しいなって思うじゃない。
- 男
- あれ作ろう、
- 女
- なに?
- 男
- てるてる坊主。
- 女
- え、そんなの効くかな。
- 男
- すごいんだから、俺の作るテルテルちゃんは。
- 女
- テルテルちゃんて。・・明日、早いんじゃないの?
- 男
- ん、まあね、大丈夫だよ。
- 女
- よし、じゃあ、作ろう。
- 終わってまた始まる