- ジュゥウウウウ
フライパンでソーセージを炒める音がする。
- トモちゃん
- はい、ありがとうございます。代行フレネミーサービスでございます。ええ、はい、 それはサービス内容によって料金は変わりますが、え。合コンなどの場合でしたら、一度試していただいて、感触見てもらって、はい。じゃ、詳細はメールで。今の生活状況と離れた友達を設定するのがお勧めですね。はい、じゃ、ちょっと状況設定のシナリオ作って送りますので、お客様の履歴書、プロフィール、現在の人間関係を詳しく、ええ、メールで。はいー、では。
- モちゃんは携帯を切るとソファにドサリと座り込んだ。
- トモちゃん
- っはぁ、まいどありー3万5っせんえーん。
- 松本
- トモちゃん…
- トモちゃん
- まつもとー。これまた美味しそうだねー。
- 松本
- トモちゃん。
- トモちゃん
- コック見習いってキビシーでしょ?皿洗って鍋あらって。
- 松本
- トモちゃん。
- トモちゃん
- あ、ユウコはまだ帰って来ないの?
- 松本
- 残業だって。
- トモちゃん
- おーえるは大変だぁ。先食べていいよね?いただきまーす。
- 松本
- さっきの、何の電話?
- トモちゃん
- 仕事。
- 松本
- 何その代行フレネミーサービスって。
- トモちゃん
- 知らない?フレネミー。
- 松本
- フレンドとエネミーくっつけた造語?テレビでやってたけど。友達と思ってる人が実は自分を陥れる敵だったっつー、
- トモちゃん
- そうそれー。あれ?仲良しなはずなのに、なんか利用されてね?あれ?よくない噂を広めてたのはあの子なの?ってやつ、あ、これちょっと塩辛くない?
- 松本
- それの、何をサービスするわけ?
- トモちゃん
- フレネミーの見分け方って知ってる?
- 松本
- あれだよ、相手の情報ばっかり集めて、自分の情報は言わないとかじゃないの?
- トモちゃん
- そ。会話にウソが多いとか、競争心が高くて、嫉妬深い、噂話が大好きだとか、雑誌で特集組まれてたよ。ほれ。
- 松本
- ああ、チェックリストまである…
- トモちゃん
- で、大体の女の子の反応は、「あ、そういえば、思い当たる人がいる!」ってなるの。
- 松本
- トモちゃん。
- トモちゃん
- 何?
- 松本
- フレネミーをサービスするの?
- トモちゃん
- はじめはね、あの子ってフレネミーじゃないかしらって思うの。でもね、今度は、自分が誰かにとってのフレネミーになってるんじゃないかって心配になるらしいの。そしたらどんな行動に出ると思う?自分にとってのフレネミーを出現させるの。「幼馴染がどうやらフレネミーだったみたいで、困ってる」ってアピール。それで、自分自身はフレネミーではないと、主張するわけよ。
- 松本
- トモちゃんが、フレネミーのフリするわけ!?
- トモちゃん
- これが最近イガイと儲かるのよね。
- 松本
- そういうのもうやめなよ。元カノのフリとかもやってただろ。犯罪の温床だよ?ユウコが心配してさ、
- トモちゃん
- だって、面白いんだもん。
- 松本
- またそういうこと言う。
- トモちゃん
- 他の人がどうやって人生立ち回っているのか、覗き見出来るんだもん。
- 松本
- 悪趣味っていうんだよそういうの。
- トモちゃん
- 人間てものがそもそも悪趣味じゃない。
- 松本
- トモちゃん。
- トモちゃん
- 人間ギライなのあたし。でも松本のことは好きよ。
- 松本
- …へッ!?
- トモちゃん
- ユウコが遅いのは別の男のところに行ってるからだよ。
- 松本
- へ!?
- トモちゃん
- なんて、信用しないで、ウソだから。あたしこれじゃまるでユウコのフレネミーだね。
- モちゃんは松本が作ったご飯を食べる。
少し、涙をこらえているかもしれない。
- おしまい