- 女
- ねえ、ねえ
- 男
- ん? ああ 何?
- 女
- ココで寝るの好きだね。そんなに落ち着く?
- 男
- ココは、まあ、俺の高校生活を支えた安らぎの場だからな
- 女
- また大袈裟な
- 男
- で、何だよ
- 女
- 何だよって、約束通り、第2ボタンちょうだい
- 男
- ああ、いいよ。でもさ、何で第2ボタンなんだろ
- 女
- 心臓に一番近いからだって。好きな人のハートに一番近い場所の…
- 男
- (引きちぎろうとするが)あれ?(引っ張る)あれ?
- 女
- 何?
- 男
- 取れない。ハサミある?
- 女
- ない
- 男
- あれ? フン!フン! あれ? フン!
- 女
- そんな引っ張ったら、服伸びちゃうよ?
- 男
- ちょっと、ボタン持って
- 女
- え?
- 男
- ちゃんと持っとけよ?
- 女
- え、どうすんの?
- 男
- フン!(思いっきり後ろに下がる)
- 女
- あっ!(男の力に負けてボタンから手を離す)
- 男はその勢いで後ろの窓ガラスに激突
ガラスが激しく割れる音
救急車のサイレン
- 女
- 先生! 私が手を離したのがいけなかったんです
- 医師
- 分かりましたから。必ず、成功しますから
- 女
- 何とか、お願いします!
- オペ室
心電図の音
- 医師
- ただ今から、第2ボタン摘出手術を行う。よろしく
- 看護師
- よろしくお願いします
- 医師
- 第2ボタンの前に、生徒手帳が邪魔なので、まず胸ポケットから取り掛かる。メス
- 看護師
- ねえ
- 医師
- メス
- 看護師
- ねえ
- 医師
- メス!
- 看護師
- ねえ
- 医師
- 何故、メスを渡さない!
- 男、夢から覚める
- 女
- ねえ、ねえ!
- 男
- ん? ああ 夢か
- 女
- 何の夢見てたの?
- 男
- いや、別に…何?
- 女
- 何って、約束通り、第2ボタンちょうだい
- 男
- ああ、いいよ。ちなみに、何で第2ボタンか知ってる?
- 女
- 心臓に一番近いから
- 男
- うん(引きちぎろうとするが)あれ?(引っ張る)あれ?
- 女
- 何?
- 男
- 取れない。ハサミある?
- 女
- ハサミはないけど、メスはあるよ
- 男
- メス!?
- 女
- 第2ボタンが取れないなら、代わりに、心臓を貰っちゃうよ(「心臓を貰っちゃうよ」だけ声が歪む)
- 男、絶叫して夢から覚める
- 女
- 大丈夫?
- 男
- ああ、夢か…
- 女
- 何の夢見てたの?
- 男
- いや、別に…何?
- 女
- 何って、約束通り、第2ボタンちょうだい
- 男
- 俺さあ…おまえのこと、好きなのかなあ
- 女
- 急にどうしたの?
- 男
- 自信なくなった…
- 女
- “好き”っていう気持ちは、常に続くもんじゃないんだって
- 男
- え?
- 女
- “好き”っていう感情は、不安定なものなの。そういうものらしいよ。だから、もし、“好き”っていう気持ちに迷いが生じた時は、それが当たり前だと思って、第2ボタンをあげる努力を惜しんだらダメなの
- 男
- もし、ボタンがなかなか取れなくても?
- 女
- そうね。でも、どうしてもボタンが取れない時は…
- 男
- どうしたらいいの?
- 女
- その時は…(声が歪む)
- 終