目覚まし時計がなる。
学生さんは起き上がる。
もぞもぞと着替えだす。
学生
静かに笑えてくる一人暮らしの朝。まだ授業も始まらない4月の朝。朝の光は優しくて僕はまるでお年寄りみたいだ。今日は、肉だらけのカレーをつくろう。古本屋で漫画をいっぱい買って読みながら食べよう。静かに笑える4月の朝。バイトは昼からだし。自転車でそこらへんをウロウロするか。
玄関のガキをしめ、自転車に乗る。
近所のおばさんが道を掃除していた。
おばさん
(不意に)「おはようございます!」
学生
「お、おぱようございます」
目覚まし時計がなって学生さんは起き上がる。もぞもぞと着替えだす。
学生
昨日はまずかった。おぱようございますはないな。絶対ない。何しろ突然だったから気が動転してしまった。一人暮らし、ご近所づきあいも大事なミッションだ。にしてもカレーはまずかった。やっぱ玉ねぎくらいいれるべきだったか。よし、今朝も自転車をチンタラ走らせよう
玄関のカギをしめ、自転車に乗る。
近所のおばさんが道を掃除していた。
おばさん
「おはようございます!」
学生
「お、おはようございます」
おばさん
「お仕事ですか?」
学生
「いえ、あのそこらへんのチンタラはしろうかとおもいまして」
おばさん
(不審そうに)「…はぁ」
目覚まし時計がなって学生はおきる。もぞもぞ着替えだす。
学生
昨日はまずかった。チンタラ走るなんてまるっきり不審者だ。やばい、怪しまれたぞ。まず自分を紹介しなくては。学生であること、まだ授業は始まってないこと、引っ越したばっかりなのでよろしくお願いします。そうだ。よろしくお願いしますだ。この挨拶が抜けてるんだ。しまった!よし…。
玄関のカギを閉める。自転車にのる。
近所のおばさんが掃除をしてる。
おばさん
「おはようございます!」
学生
(大声で)「よろしくお願いします!!!」
目覚ましがなる。学生は起きる。着替える。
外は雨。
学生
違うって違う。ますます糸がこじれたぞ。普通。普通を心がけねば。普通か…。普通ってなんだろう。普通に挨拶。こんなに難しいとは知らなかったぞ。そうだお天気だ。「いいお天気ですね」これで充分じゃないか。そうだそうだ。
カギをかける。
学生
おや雨だ、傘をもっていかなきゃ。
近所のおばさんがゴミだししてる。
おばさん
「おはようございます」
学生
「おはようございます。今日はいいお天気ですね!」
おばさん
「え?…」
雨の中、学生が上機嫌で歩く。
学生
やった!できたぞ普通の挨拶!うひょー。明日から授業もはじまるし、桜はこの雨で散ってしまったけど、僕の新生活は上々の滑り出しじゃないか!あぁ。あぁ。
学生さんは口笛をふきはじめる。
おわり