男と女がタクシーに乗って、駅に向かっている。
間に合うかな?
あと二分。
降りたら急がないとヤバいよな?
(タクシーの運転手に)そこ左入って下さい。
え?
近道だから。走る準備しといて。
なんか悪いな、最後まで。
え、普通に営業やってますから。
新しい仕事がんばってね。
落ち着いたら、あいや、電車乗ったらメールするし。
切符用意しときなよ。
・・・なんだかんだで、この街でおまえと過ごした二年間、楽し・・・
踏切の音
来る来る、もう来るって!
え、もう!?
(タクシーの運転手に)もっとスピード出してください!
無茶言うなおまえ、(タクシーの運転手に)すいません。
あんたが寝坊するからこうなってんでしょ。
起こしてくれって言ったじゃん。
あーもうここでいいです!お釣りいらないんで。早く!
タクシーを降りて、電車のホームに猛スピードで走り始める男と女。
・・・なんでおまえも走ってんの!?
いいじゃん別に!走ったっていいじゃん。
ホームまで見送ってくれんの!?
遅い!。片方荷物貸して!
なあ!
なに!?
ずっと思ってたんだけどさ、あの部屋、二人で住むには狭かったよな!
なに言ってんの!?
狭くなかった!?
狭かった!六畳しかないってどういうこと?
選んだのおまえだろ?
なに、あたしのせい!
そうじゃなくてさ。
やめようよこういうの。昨日みたいな空気になるでしょ!
俺さ!昨日さ!もっと思い出話したかったんだよね!
うわ、未練がましい。
これで最後って、気持ち悪くない?
ちょっとね!
荷物返して!
なんで。
改札!
だいじょうぶ、切符あるから。
えっ。
止まらないでよ!
おまえ。
入場券だからね、言っとくけど。
用意してくれてたのか。
改札を通り抜ける二人。
来てる!電車着く!
おいおいおい、今、ヒュー・ジャックマンとすれ違わなかったか!?
集中しろよ!
なんでこんなところにヒュー・ジャックマンが!?
前向いて!
ホントにいたんだって!
あとでその話聞くから。
無理!
男、携帯電話を放り投げる。
携帯、落とした。
え?
手が滑った!
ええ?
止まってる暇ないって!着いてるもん電車、開いてるもん扉。降りてるもん乗客。
すいません!通して下さい、すいません!
階段、転ぶなよ!
急いで!
乗ります!
乗ります!
閉まる閉まる閉まる閉まる!
電車に乗り込む二人。電車の扉閉まり、発車する音。
どうすんの?次の駅で、降りる?
・・・
ほんとは昨日までの間に、ちゃんと言おうと思ってたんだけど・・・次に住む部屋、八畳あるんだ。
(笑って)広いね。
だろ?おい、どこ行くの。
先頭車両。景色見たい。
え?ちょっと待って。ねえ!