- 女
- はい、プラス出版社です
- 男
- マイナス書店です。書籍の注文をお願いします
- 女
- はい、ありがとうございます
- 男
- “たのしい幼稚園”を10冊
- 女
- “たのしい幼稚園”を10冊ですね
- 男
- 今月はどんな付録が付いてきます?
- 女
- 今月は“さみしい幼稚園”が付いてきます
- 男
- はい?
- 女
- “さみしい幼稚園”が付いてきます
- 男
- “たのしい幼稚園”の付録ですよ?
- 女
- はい。“さみしい幼稚園”です。コレを10冊
- 男
- ちょっと待って下さい。それはどういう付録ですか?
- 女
- すごく寂しい時ってありますよね。マイナス書店さんにもありますよね
- 男
- はい
- 女
- その寂しさは、楽しいことがあったから感じるんですよって話です
- 男
- それ、幼稚園児に言う必要ありますか?
- 女
- 人は生まれてから、色んな寂しい瞬間を経験して行きます。でも、その寂しい瞬間は、楽しいことがあったら感じているんです。だから、幸せじゃないかと
- 男
- 言いたいわけですよね? 幼稚園児に
- 女
- 幼稚園児にって言うか、寂しい人に言いたいわけです
- 男
- “たのしい幼稚園”はやっぱいいです
- 女
- よろしいですか? 5冊くらいにしておきます?
- 男
- いや、いらないです
- 女
- かしこまりました。他に注文は?
- 男
- “おもしろ大百科”を10冊
- 女
- “おもしろ大百科”を10冊ですね。こちら“おもしろくない大百科”付いてきます
- 男
- え、ちょっと、え?
- 女
- “おもしろくない大百科”付いてきます
- 男
- 何ですか、それは
- 女
- 付録です
- 男
- どういった付録ですか?
- 女
- 例えば、映画を見ていて、面白くないなあって感じる時ありますよね。
マイナス書店さんにも…
- 男
- あります
- 女
- よね。その面白くなさは、面白いものを観た時の記憶があるからなんだよって話なんです。だから、面白くないと感じても、それはいつかの面白いがあったから感じているんだよと。幸せじゃないかと
- 男
- なるほど、分かりました
- 女
- ありがとうございます。コレ10冊で
- 男
- いや、結構です。やっぱいらないです
- 女
- よろしいんですか?
- 男
- はい
- 女
- 他に何か注文ございますか?
- 男
- あります。“変な付録を付けないでほしい”
- 女
- それ、注文ですか?
- 男
- そうです
- 女
- 付録として“そんなことじゃ生きていけない”が付いてきます
- 男
- 説明を聞かせて下さい
- 女
- 書店さんも我々出版社も倒産してしまいますよって話です。付録がイヤだからって注文しないとなると、お互いに続けて行くことは出来ません
- 男
- じゃあ、どうすればいいんですか?
- 女
- 書店さんも我々出版社もお互いうまく付き合って行くしかないんじゃないですか?
現実を受け入れるべきかと
- 男
- なるほど、分かりました
- 女
- 他に注文よろしいですか?
- 男
- “大好きな温泉宿100選”を10冊下さい
- 女
- “大嫌いな温泉宿100選”が付いてきます
- 終