- ウェデングの鐘。皆の歓声。
- 姉
- 大輔。今までありがとうな。
- 大輔
- うん。
- N(大輔)
- 9年にもおよぶ大恋愛の末、やっとこ姉が結婚。次は弟さんね、え?弟さんまだなの?そんな囁きがそこいらで交わされてる気がしてならなかった。チャペルでブーケを投げる姉を見ながら、僕は20年前のことを思い出していた。
- 回想シーン。浴室でチョキンチョキンと音がする。
- 大輔(11歳)
- ほんま?
- 姉(13歳)
- ほんまほんま。
- 大輔
- ほんまにほんま?
- 姉
- ほんまにほんま。フミヤみたいにしたるから、
- 大輔
- お姉ちゃんほんまやで!
- 「ジョキン」と大きな音。
- 姉
- …
- 大輔
- 僕な、フミヤ大好きや!
- 姉
- そうか。
- 「ジョキン」と再び大きな音。
- 大輔
- 大崎くんもな、フミヤ好きやで。
- 姉
- 大輔。
- 大輔
- え?
- 姉
- ちょっと黙ってて。
- 大輔
- うん!
- 「ジョキン!」と大きな音。
- 姉
- …。うーーーん。
- 大輔
- お姉ちゃん、後ろスースーする。
- 姉はバリカンを取り出す。バリカンの音。
- 大輔
- お姉ちゃんフミヤは刈上げじゃないよ。
- 姉
- うるさいな!髪の毛散るやろ。動いたらあかん!
- 姉はバリカンを始動。
- 大輔
- お姉ちゃん!
- 姉
- 耳切るで!
- 大輔
- ヒィー。
- 姉
- もうすぐフミヤなるから、
- 大輔
- ほんま?
- バリカンの音が急に止む。
- 大輔
- どうしたん?
- 姉
- 休憩。そこ動いたらあかんよ。
- 大輔
- お姉ちゃん、鏡みせてーや。
- 姉
- フミヤする言うてるやろ。
- 大輔
- ほんま?
- 姉
- ほんま。
- 大輔
- ほんまにほんま?
- 姉
- …。
- 姉は浴室から居間に移ってしまう。
居間でテレビがつく音。
- 大輔
- ほんまにほんまにほんま?ほんまにほんまにほんまのほんま?(繰り返しつつ小さ
く)
- 回想終わり。再びウェデングの最中。
- 大輔(N)
- 姉はそのあとテレビを見続け、しばらくして友達と一緒にエレクトーンにいってしまった。僕はお風呂場で泣いてるのを仕事帰りの母に見つけられ、結局丸坊主に。
あれ以来僕は、僕は、僕は…
- ドレス姿の姉が大輔に近づいてくる。
- 姉
- 大輔には私がいい人紹介してあげるから、
- 大輔
- ほんま?
- 姉
- ほんまほんま、会社の後輩、上戸彩そっくりな子いるから、
- 大輔
- ほんまにほんま?
- 姉
- ほんまほんま。
- 大輔
- ほんまにほんまにほんまのほんま?
- 姉
- ほんまにほんま、そっくりやから、
- 大輔
- ほんまにほんまにほんまにほんまのほんま?????
- おわり