- 秋の公園。ベンチに男女が座っている。
男はこの日のために指輪を隠し持っている。
そう今日こそプロポーズをしようと決意したのだ。
- 男
- あの、えっと、
- 女
- ちょっと寒いね。
- 男
- 秋、秋だから、
- 女
- 秋、好き?
- 男
- うん。秋好き秋一番。
- 女
- 私は春のほうが好きかな。
- 男
- うん俺も春好き春一番。
- 女
- …どうしたの?
- 男
- …でも、秋よりも春よりも、俺は一番、君が好き。
- 女
- …なによ改まって、
- 男
- あのさ、突然かもしれないけど、
- 女
- (何かを発見して)あ!!
- 男
- え?
- みれば公園を相撲取りの集団がジョギングしていた。
- 女
- 相撲取りがジョギングしてる。
- 男
- …。
- 女
- すごーい。ジョギングとかするんだね。
- 男
- そうだね。
- 女
- 膝とかいためないのかな、
- 男
- そんなことどうだっていいじゃん!
- 女
- どうしたのよ?
- 男
- …。あのさ、びっくりさせて申し訳ないんだけど、ずっと真剣に考えてきたことなんだ、つまり、
- 突然二人の近くに雷が落ちる。
- 男女
- ギャーーーーーー!
- 男
- 大丈夫?
- 女
- びっくりしたー。
- 男
- 怪我とかない?
- 女
- うん。私は大丈夫だけど、相撲取りさんが、
- 男
- え?
- 女
- 一人に雷直撃したみたい。
- 男
- …。
- 女
- 早く救急車呼ばなきゃ。
- 男
- まって、
- 女
- え?
- 男
- そんなことどうだっていいじゃん。
- 女
- でも雷だよ。
- 男
- 普段から鍛えてるんだから、
- 女
- でも、
- 男
- 俺、ずっと考えてて今日しかないって決めてて、その、つまり、
- 相撲取りたちに羽根がはえ、公園中を飛びまわる。
ものすごい羽音。
- 男
- (身をかがめながら)今度はなに?!
- 女
- 相撲取りたちに羽が生えて公園中を飛びまわってるのよ!
- 男
- え?
- 女
- 仲間が怪我をして興奮してるんだわ!
- 男
- 相撲取りって、相撲取りって。
- 女
- すごいさすが国技ね。こんなこともできるなんて、
- 男
- そんなことはどうだっていいんだ!!!
- 女
- …。
- 男
- たとえ空が落ちてきても、海がカラカラに干上がってしまっても、俺は、俺、決めたんだ。
- 女
- 何を?
- 男
- 俺と、ケッ、
- 女
- (上空に何かを発見し)あ!
- 男
- そんなことはどうでもいい!
- 女
- 見てよ、空!
- 今度は公園上空にUFO(のようなもの)が現れる。
「ウィンウィン」という不気味な音。
公園中はまばゆい光に囲まれる。
- 男
- 何だあれ?
- 女
- …国技館よ…
- 男
- え?
- 女
- 怪我した相撲取りを助けに、国技館が助けに来たのよ!
- 空とぶ国技館の床のほうから光が降り、怪我をした相撲取りを国技館に収める。
- 女
- 和よ。
- 男
- え?
- 女
- 和をもって尊しとなす。たった一人の仲間のために国技館まで出動する。さすが日本の国技だわ!
- 男
- そんなことどうだっていいじゃないか!!!
- おわり