- 女
- じゃあ、最終確認。
- 男
- うん…。
- 女
- タイミングは誓いの言葉。
- 男
- うん…。
- 女
- 花嫁が「誓います」って言う前、さえぎるように…
- 男
- 「誓いません!」
- 女
- そこやねんけど、何かタクちゃんが花嫁みたいでおかしくない?。
- 男
- じゃあどうしたらええ?
- 女
- そうさせる…みたいな。俺が!みたいな。そんなんがええな。
- 男
- 「ちょっとまった!」えー…「俺がそれを阻止する」んー「誓いをさせないように」みたいな?
- 女
- きまらへんな。もっと短く。
- 男
- えー…じゃあ「誓わせません!」
- 女
- あ、いいねいいね。
- 男
- 「誓わせません!」
- 女
- そうそう、で、タクちゃんがミカに駆け寄って…
- 男
- 万が一邪魔が入ったら
- 女
- 私が取り押さえる。で、タクちゃんがミカの手を引いて…
- 男
- チャペルを出る。よぉし…。
- 女
- …花婿さんラガーマンらしいね。大学でラグビーやってたって。185センチ。
- 男
- カナ、何センチ?
- 女
- 155。まぁでも頑張ってみる。
- 男
- 助かる。
- 女
- 知ってる?ミカのお父さん柔道教えてるらしいよ。
- 男
- 何センチ?
- 女
- 178。でもまぁまだ左手があいてるから。右手でラガーマン花婿。左手が柔道お父さん。
- 男
- もしも、もしも神父さんが介入してきたら、右足で食い止められる?
- 女
- やってみる。もし誰か来ても左足あいてるし。
- 男
- ありがとう。
- 女
- 車はスグ前に停めとくこと。
- 男
- うん。でも駐禁怖いな。
- 女
- 私がギリギリまで見張っとく。
- 男
- 助かる。
- 女
- 車は借りてる?
- 男
- あ、それがお兄ちゃんその日使うらしくって。代わりに、おじいちゃんの
- 女
- おじいちゃんの
- 男
- 軽トラ
- 女
- 逆にええかも
- 男
- そう思う?
- 女
- うん。カッコ悪いカッコええ。みたいな。一周回って。
- 男
- 良かった。あ、でも
- 女
- まだ何かあんの?
- 男
- エンジンの調子悪くて、押しがけせなアカンねん。誰かが後ろから押して…
- 女
- 私やな。私しかおらんし。
- 男
- 助かる。
- 女
- じゃあ復唱。
- 男
- 花嫁の誓いの言葉をさえぎって「誓わせません!」俺は出て行ってミカの手を引いて表の軽トラへ。
- 女
- ギリギリまで私が駐禁見とく。
- 男
- 180のラガーマンは
- 女
- 185
- 男
- 185のラガーマンはカナが右手で押さえて、柔道やってる17…8
- 女
- 正解
- 男
- 178のお父さんは左手で食い止める。万が一神父さんが出てきても右足で。
- 女
- 左足もフリー。
- 男
- 逆にカッコええ軽トラはカナが押しがけを手伝ってくれると。以上!
- 遠くでチャペルの音
- 女
- 満足した?
- 男
- 充分。…付き合ってくれて、ありがとう。
- 女
- なんぼでも付き合うよ。妄想ならね。
- 男
- スッキリした。
- 女
- …本心?
- 男
- もちろんや。早く、祝ってやりたい。
- 女
- うん。じゃあ約束の、一緒にてんとう虫のサンバやで。ミカのリクエスト。
- 男
- 踊りつきで歌ったるわ。
- 女
- よし、じゃあ行こう。もう時間や。
- 男
- ホンマありがとうな、カナ。
- 女
- ええってもう。
- 男
- カナの結婚式の時は俺なんでもするから言うてくれよ、てんとう虫のサンバでも乾杯でも。
- 女
- 別に…隣におってくれたら、それでええよ。
- 遠くでチャペルの音
- 男
- え?なんて?
- 女
- 別に~。
- 男
- ホラ、早く行こう、ミカが待ってる
- 女
- 行こ行こ!
- てんとう虫のサンバが聞こえてくる
ひどい歌声とともに…
- ~おわり~