タップリカ共和国
シューズ会社の応接室
社長
(通訳に)(タカットカッタッタタタ)
通訳
タップリカ共和国へようこそ。タップリカの国内シェア一位を誇るシューズ会社
“ハイトルマン”の社長のカヤック・パ・マイヤーです
営業
歓迎ありがとうございます。日本で主にベビーシューズを販売しております、カワカベと申します。今日はお会いできて光栄です
通訳
(社長に)(トタカットスタッタタ)
社長
(通訳に)(タカタカトッタカタトカ)
通訳
まあ、どうぞおかけください
営業
失礼します
通訳
(社長に)(トタカタンッ)
営業
タップリカの空気はすごく綺麗ですよね
通訳
(社長に)(タカタカタカトッタカトン)
社長
(通訳に)(ダカダカダカトタッカタントン)
通訳
ありがとう。タップの音がよく響く環境です
営業
ああ、なるほど
通訳
(社長に)(トントンタカッ)
社長
(通訳に)(ダカットタンカントンタカタン)
通訳
早速で失礼ですが
営業
はい
通訳
タップリカで流行するであろうベビーシューズというのは?
営業
あ、はい。こちらの“音の出るシューズ”です。タップリカの子供たちは5歳になるまでは、タップシューズが重くて危ないため、スニーカーを履いているとお聞きしました。そこで、この“音の出るシューズ”。これなら、大切な5歳までの期間もきっと満足して履いていただけるのではないかと(途中から同時通訳。セリフにタップの音が被る)
社長
(通訳に)(トカタントンタン)
通訳
どんな音が出るのですか?
営業
はい。歩くたびにキュッキュッという音がします。日本ではお馴染みの音です。では、実演してみたいと思います…が、これはベビーシューズです。私は残念ながらベビーではありません。というわけで、今日はベビーを連れてきました(途中から同時通訳。セリフにタップの音が被る)
通訳
ベビーをですか?
営業
とか言って、ジャパニーズジョークです。通訳して下さい
通訳
(社長に)(トントントントンタン)
社長
(通訳に)(トンタカタタッタタ)
営業
ウケてます?
通訳
誰のベビー?って聞いてます
営業
おい、マジかよ。えー、ベビーを連れて来ようと思いましたが、無理でしたので、私が履ける“音の出るシューズ”を持って来ました。27.5サイズのベビーシューズです。はい、もはや、ベビーシューズではない。これはどうだ(途中から同時通訳。セリフにタップの音が被る)
社長
(通訳に)(トッタカトンタッタタッタカン)
通訳
是非音を聞かせて下さい
営業
え、ちょっと待って。え?“もはやベビーシューズではない”は通訳してくれました?
通訳
しました
営業
タップリカの人はどういうところで笑うの?
通訳
カワカベさんは、笑わしに来たんですか? 靴を売りに来たんですか?
営業
靴を売りに来たんだよ。芸人じゃないんだから
社長
(通訳に)(タカットンットン)
通訳
何を話しているんだと
営業
分かったよ。じゃあ、ベビーシューズの音を聞いて下さい
通訳
(社長に)(トンタッタッタッタタ)(営業に)どうぞ
営業
(キュッキュッキュッという音が鳴りながら)こんな感じです。歩く度に鳴ります。とても軽いですし、これで、小さい頃からステップに慣れることが出来るわけです。どうですか?(と、歩き続ける)
通訳
(社長に)(タカッタントンタカトッタンタカトンッ)
社長
(通訳に)(タッタカントンタカタカトントンタカッ)
営業
(同時に)(キュッキュッキュッキュッキュッキュッ)
通訳
(社長に)(スタッカトンカタカタトンタカットンッ)
社長
(通訳に)(カンタカタカットッスタカンタッタトン)
営業
何話してるんですか?
その時、営業の携帯電話が鳴る
通訳のタップと社長のタップと営業のキュッキュッと携帯のメロディが重なる
営業
(携帯の音鳴ったまま)(時々キュッキュッの音も入りながら)ああ、すみません、音、切ってなかった。失礼しました。あ、ちょっと、うちの社長からですね。ちょっといいですか? 失礼します。すみません
応接室をドアを出る音
急に静かになる
営業
はい、カワカベです。ああ、今、交渉中です。
状況は… 足踏み状態ですね
キュッキュッ