- 行為の後。
女は男の腕枕、男はぼんやりしている。
- 男
- まゆ、
- 女
- は?
- 男
- え?
- 女
- いま、まゆって言わんかった?
- 男
- え?
- 女
- 誰よまゆって?
- 男
- え?
- 女
- 誰??
- 男
- だから、
- 女
- もしかして、…、
- 男
- 違うよ。そんなまゆとか全然違うよ。
- 女
- じゃだれよ。
- 男
- だから、まゆは、…だから、まゆかけババァの話でもしようかなって、
- 女
- はぁ??
- 男
- 知らん?まゆかけババァ。妖怪。妖怪。
- 女
- …。
- 男
- マジやって。白い繭をプーーーーって噴出して、サナギみたいにぐるぐる巻きにする妖怪。俺が大学の頃さ、雪山で遭難しかけたことあるって言ったやん。そん時山小屋があってさ。そこで出合ったもん。まゆかけババァ。マジマジ。
- 女
- ほんと??
- 男
- ほんとほんと。そこで助けてもらってさ。「このことは誰にも話してはいけません。もし話すと、
- 「プーーーーーーー」と女は糸を吐く。
- 男
- おいおいおい。マジー。これまゆ?ウソウソウソ。まゆかけババァとかウソやから、出合ったことないって。作り話やから。
- 女
- じゃまゆって誰よ。
- 男
- その前にお前誰やねん。こんなまゆ吐きやがって。ぐるぐるするな!殺す気か。
- 女
- まゆって誰よ。
- 男
- まゆ、は、まゆ、
- 女
- やっぱり何か隠してるんや(少し涙声)。
- 男
- 痛い!まゆを、こら吐くのやめろ。締め付けるなって、
- 女
- 全部喋ってよ!
- 男
- その前にお前は誰やねん?
- 女
- ごまかさんといて!
- 女は男をぐるぐる巻きにする。
- 男
- 前の彼女じゃ!まゆみ。
- 女
- …何で?今は私と一緒にいるでしょ?
- 男
- ごめん。
- 女
- なんで今そんな名前言うの?
- 男
- だからごめん。
- 女
- …なんで正直に言うのよ。
- 男
- は?
- 女
- むしろごまかしきってほしかった…。
- 女はさらに繭を吐き(プウウウウウウウ!)男をグルグル巻きにする。
- 男
- どうすればよかってん!!!!!!!
- おわり