- 男と女、茶をすすりながら、居間でニュースをみている。
- 男
- ミサイルが飛んでくるって言われてもな。
- 女
- 飛んでくるかもでしょ。
- 男
- 飛んでくるかも。
- 女
- もし飛んでくる場合は10分前に警報がながれるそうだけど。
- 男
- 10分か。で、どうしたらいいの?
- 女
- 堅牢な建物に逃げ込んで下さいっていうことらしいけど。
- 男
- 堅牢な建物ってなに?
- 女
- 学校とかじゃない?
- 男
- 家にいたら10分じゃ間に合わないよね。
- 女
- うん。
- 男
- 会社は?
- 女
- さあ、耐震基準、満たしてなかったよね。もしかしたらやばいかも。
- 男
- う~ん。あ、迎撃ミサイルあるじゃん。
なんだっけ、イージス艦とかパトリオットミサイルとか。
- 女
- 当たらないかもしれないんだって。
- 男
- かも?
- 女
- かも。あたるかもしれないし、あたらないかもしれない。
- 男
- あやふやだ。
- 女
- 飛んでこないかも。
- 男
- 飛ぶとしたらいつくるんだっけ。
- 女
- 来週のどこか。
- 男
- あやふやだな。
- 女
- そうよね。あやふやよね・・・。
- 二人、お茶をすする音。
- 男
- なんとなく、いつも通りにしてるけど。
- 女
- うん。
- 男
- いつも通りで過ごすしかないか。
- 女
- このままでいいのかしら。
- 男
- え?
- 女
- なんか、このままでいいのかな~って、なんか思っちゃうのよね。
- 男
- なんかしてみる。
- 女
- 何を。
- 男
- 防空壕ほるとかさ。
- 女
- 防空壕?
- 男
- 無理か。っていうか、ほってもここにいない可能性があるんだよな。
- 女
- 逃げ出そうかな?
- 男
- 無理だよ。来週だろ?大事なプレゼンが立て続けにあるんだよ。
そんなの無理無理。
- 女
- そうよね。私も来週はどうしても外せない用事があって。
- 男
- え?何?
- 女
- (あ、しまったと云う表情)
- 男
- え?何?その口すべらせたみたいな表情。
- 女
- なんでもない。
- 男
- なんでもなくないだろう。今の今、どうしてもはずせない用事があるっていったばかりじゃないか。
- 女
- メンドクサイ~。
- 男
- メンドクサイ~ってなんだ。大事な用事だが、僕には言い言いにくい用事と云う事は、僕に取っては不愉快な用事ってことだろ。
- 女
- お見合い。
- 男
- お見合い?
- 女
- そう、お見合い。上司がさ、どうしてもっていうから。その断れなくて。
- 男
- 断れよ。
- 女
- いや、いったんだけど。
- 男
- なんだよ~それ。断れよ。今からでも遅くないだろう。
- 女
- ええ~・・。
- 男
- お前ふざけんなよ。
- 女
- ふざけんなって、何よその言い方。何上からいってんのよ。
- 男
- あたりまえだろう。お前、そりゃ裏切り行為じゃねーか。
- 女
- 裏切りでもなんでもないわよ。
別に私はあなたと結婚するって約束した訳じゃないんだからね。
- 男
- 約束?
- 女
- そうじゃない?あなた、一度でもいった?
- 男
- それは、お前、ちゃんというよ。来るべき時がきたら。
- 女
- 来るべき時っていつよ。はっきりしてよ。
- 男
- その時がきたら、言うんだって。マジで。絶対。
- 女
- ああ~もう、なんか全然リアリティーないんだけど。