- 私
- あれ?なんで?ねぇ、なんでアイちゃんのヒール、片っぽだけ短いの?
- 私は玄関にしゃがみこんでハイヒールの裏っかわを眺める
台所からは、トントントン
いい匂いまでしてる
- アイ
- えー?なんてぇー?
- 私
- アイちゃんのハイヒール、全部右のヒールが短いの、なんで?
- アイ
- やっだ、そんなことも知らないのアンタ。ご飯出来たわよ。
- 私
- はぁい。
- アイ
- 常識でしょうが。お箸とって。
- 私
- 歩きにくいじゃん。いただきます。
- アイ
- モンローよ。
- 私
- おいしぃ!アイちゃん天才だね。
- アイ
- 一人暮らしのくせに料理も出来ない女って最低よ。
- 私
- 何がモンロー?
- アイ
- だから、そんなことも知らないの?モンローウォークよ。
- 私
- なにそれ。
- アイ
- セクシーの代表でしょ?モンロー。お尻ぷりぷりさせて歩くのよ。
- 私
- あれ笑えるよね。
- アイ
- あ、それアタシのから揚げまでとらないで!
- 私
- だっておいしいんだもん。
- アイ
- アンタ食ってばっかだから太るのよ!ちょっとはセクシー勉強しなさいよ。ヒール片っとだけ切って歩くと、自然とお尻ふって歩くようになるの。モンローはあれだけ美しくてもね、キレイを怠けてなかったのよ。研究してたのよ。だから寝る時だって、裸で身にまとうのは香水だったのよ。アンタね、三枚千円の下着なんてやめなさい。それはランジェリーとは呼べないわよ。化粧品を一年も二年も同じやつ使うのやめなさい。三ヶ月で使いきるものなのよ。安い服着たっていいけど、工夫しないさいよ。いい?ダイヤはね、磨かなきゃ石ころなの。分かった?
- 私
- からあげもう一個ちょうだい。
- アイ
- ダメだわ。男がいないせいね。
- 私
- いいの、いいの。私、
- アイ
- イヤ!私なんかどうせとか言ったら殺すわよ
- 私
- 私、今のままでじゅーぶんだもん。
- アイ
- 鏡見なさいよ!それほど悪くないけど、良くもないわよ。
- 私
- 仕事終わって、アイちゃんが作ってくれたご飯食べてお風呂入って、おしゃべりしながら眠るのが、今のイチバンの幸せなんだから。いいじゃない。
- アイ
- いないの?好きな男の1人や二人や三人や四人や五人くらい。
- 私
- 多くない?
- アイ
- 生まれつきの美人なんて一握りなの。みんな努力して美人になってるの。アンタ努力のカケラもないじゃないの。五人くらい男を追いかけてりゃ、何かしらの努力するでしょ?
- 私
- いないわけじゃないんだからね。
- アイ
- あら。
- 私
- だって、無理だもん。
- アイ
- なんではじめから諦めるの?いい?勝ちに行くのが恋なの。
- 私
- だって、私より仕事の稼ぎはいいし。
- アイ
- めちゃくちゃいいじゃない。
- 私
- 私より人間出来てるし。
- アイ
- なおいいじゃない。
- 私
- 私より掃除も洗濯も料理もうまいんだよ。
- アイ
- 申し分ないじゃない。
- 私
- 私よりすごいキレイなんだよ。
- アイ
- 美形!?美形なの!?
- 私
- すっごく仲のいい友達だし。
- アイ
- 押し倒しておしまいなさい。
- 私
- アイちゃん。
- アイ
- 何?
- 私
- …からあげ、おいしいね。
- アイ
- …ねぇ…
- 私はいつのまにか、ご飯をほおばりながら泣いてしまっている
- アイ
- なんで泣いてるの?
- 私
- …なんでもない。なんでもないから。
- アイ
- やだ、ちょっと、どうしたの?
- 私は泣き止むことが出来ずに
- アイ
- もう、どうしたのよ。おいで、ハグしてあげるから。
- 私とアイちゃんは、友達
- おしまい