- 弟子
- 先生~、お待たせしました~。
- 先生
- チェックインに随分かかったもんだ。
- すみません。明日、ここらで大きなお祭りが催されるみたいなんですよ。
- 先生
- 祭りかぁ。学会の合間に見物してみるか。
- 弟子
- やったぁ!!
- 先生
- 部屋、どこ。論文の最終チェックをしたいんだ。
- 弟子
- 先生は、お化けと人間、どっちが怖いですか?
- 先生
- なんだよ唐突に?
- 弟子
- その、私はちゃーんと部屋を予約しておいたんですよ、でも、できてなかったんですよねー。
- 先生
- へ?
- 弟子
- 部屋の予約がとれてなかったんです。
- 先生
- 別のホテルは?
- 弟子
- あたってもらったんですけど、どこも満室で・・・。
- 先生
- 今夜どうすんの。
- 弟子
- で、ホテルの人にかけあって、二つ部屋を用意してもらったんです。
- 先生
- なら問題ないでしょ。
- 弟子
- そして、さっきの質問につながるわけです。
- 先生
- お化けと人間どっちが怖いかって?
- 弟子
- はい。一つの部屋は、幽霊がデルというイワクつきの部屋だそうで、
- 先生
- もう一つは?
- 弟子
- ホテルの死角のような場所にあって、強盗が頻繁に押し入るもんだから、鍵すら壊れてしまってる部屋だそうです。
- 先生
- うぬぬ・・・。
- 弟子
- 先生は、幽霊の部屋になさいますよね。
- 先生
- どうして勝手に決める。
- 弟子
- この世に幽霊など存在しないって、先生おっしゃってませんでしたっけ?
- 先生
- それは、キミが心霊写真の雑誌だとかを無理やり見せようとするからで・・・
- 弟子
- やっぱ先生も怖いんだ。
- 先生
- というか、か弱い女性を強盗が入るような部屋に泊めるわけにはいかないだろ。
- 弟子
- 私のことは気にしないでください。あ、こんなのもあるんです。
- 先生
- これ・・・。
- 弟子
- スタンガン。ホテルの人が無料で貸し出ししてくれました。
- 先生
- マジかよ・・・。
- 弟子
- マジみたいです。
- 先生
- 幽霊の方が、まだ安全ってことか。
- 弟子
- どうなんでしょう。失神する人もいて、なかには搬送先の病院で、二晩も意識が戻らなかった人もいたんですって。
- 先生
- そんなことになったら、学会どころじゃなくなるぞ。
- 弟子
- 生きている者か、死んでいる者か、それが問題だ。
- 先生
- ふざけてる場合か?
- 弟子
- こっちが幽霊部屋で、こっちが強盗部屋のキーですから。お好きな部屋をお使いください。
- 先生に、キーを二つとも手渡す弟子。
- 先生
- ね、一緒の部屋に泊まらない?神に誓って何にもしないから。
- 弟子
- 無理です。
- 先生
- ホント下心とかないんだって。二人で居れば何かと心強いしさ。
- 弟子
- だって私、彼氏の実家に泊めてもらうことにしたんです。
- 先生
- 彼氏の、実家・・・。
- 弟子
- 先生も来ます?
- 先生
- そんな厚かましいことは、
- 弟子
- できませんよね。じゃあ、明日の祭り、じゃなかった学会楽しみにしてますんで。
- 先生
- ・・・ああ、足元にすがりついてでも、一緒に連れていってくれと頼めばよかった・・・っていうか、おいてくか普通・・・どうすりゃいいんだ、バカヤロー・・・。
- 終わってまた始まる