- 雨が降っている
- 女
- 雨。
- 男
- 降ってるなぁ。
- 女
- なんか海にいるみたいや。
- 男
- 部屋ん中まだ空っぽやから、よう聞こえるんやな。
- 女
- そっか。
- 男
- 降るって言うてたっけ。
- 女
- ううん。
- 男
- まいったな・・・。
- 少しの間
- 女
- 二人ぼっちって感じ。
- 男
- 二人ぼっち、取り残された寂しい響きや。
- 女
- ここは、雨に閉ざされた島なの。
- 男
- でた、チエちゃんの妄想ワールド。
- 女
- 二人はどこにも行けへんし、この島には誰も来おへんねん。
- 男
- ずっと二人かいな。
- 女
- 二人ぼっちで、しみじみ暮らすねん。
- 男
- しみじみとは暮らせんで、ぜーんぶ自分らでせなアカンのやろ。
- 女
- 二人しかおらんからな。
- 男
- 狩りしたり、火おこしたり、稲作とかもして、チエは機織とか、水汲みとか、川で洗濯とか、そんなん大忙しやで。
- 女
- ショウゾウさんの方が、はげしく妄想してるよ。
- 男
- ディティールが気になるやん。
- 女
- このまま時間が止まればいいのになって思っただけ。
- 男
- チエ。
- 女
- はい。
- 男
- 嫌なんか、結婚すんの。
- 女
- ふふっ(足を男に絡める)。
- 男
- 足、冷めた。
- 女
- ショウゾウさん、ぬくいな。
- 男
- ・・・嫌なん?
- 女
- 嫌やないよ。
- 男
- ほんまに?
- 女
- ほんまや。けど・・・
- 男
- けど?
- 女
- 今、満ち足りてるから。先へ進むんが怖いねん。
- 男
- 怖ない、怖ない。もっと、幸せになるねん、リミットないねん、どこまで行くねんっちゅうくらい、幸せうなぎのぼりぃ。
- 女
- んなわけない。
- 男
- んなことあるの。
- 女
- ・・・何時?
- 男
- 五時少し前。
- 女
- あと六時間後には、ウエディングドレス着てんのか。
- 男
- やむかな。
- 女
- 雨降って地固まるとか、誰か言うんやろな。
- 男
- うちの会社の上司、絶対言うわ。
- 女
- ワタシの父さん、大泣きするんやろな。
- 男
- オレも怖いで。
- 女
- え。
- 男
- 二人の間に色んなもんが流れ込んで、気持ちが見えんようになったり、すれ違ったり。
- 女
- うん。
- 男
- でも、今、チエの足あったまって、オレの足は少し冷えて、同じ温度になってる。
- 女
- ショウゾウさんの足か、ワタシの足か区別つかんくらい一緒の温度。
- 男
- こんな感じでいこや。
- 女
- 一緒の温度。
- 男
- 時々、二人ぼっちでしみじみ島に行って。
- 女
- うん。
- 雨の音は、波音のように響く
- 終わってまた始まる