- 息子
- ちょう、なにしてん。
- おかん
- ん・・・。
- 息子
- いっこも片付け進んでへんやんけ。
- おかん
- これなぁ・・・。
- 息子
- なにそれ。
- おかん
- 爪楊枝入れかな。
- 息子
- それ・・・。
- おかん
- あんたが、小学校の時学校で作ったって、
- 息子
- そんなもんまだ置いとったんか。
- おかん
- 今、出てきてん。
- 息子
- もう捨て捨て。
- おかん
- え。
- 息子
- 使ってへんのやろ。
- おかん
- でも・・・。
- 息子
- いらんいらん。
- おかん
- ・・・。
- 息子
- このスーパーの袋かて、こんなようけいらんやろ。
- おかん
- 色々便利やねん。
- 息子
- 一日一枚使こても一生分あるわ。
- おかん
- そんなに無いわ。
- 息子
- 捨て。
- おかん
- これから石油が高こなって、袋が不足する時代がくるかもしれんのやで。
- 息子
- そうなったら、そうなった時に考えたらエエがな。
- おかん
- 「あん時捨てんかったらよかった」て、悔しがってももう遅いんやで。
- 息子
- 捨てなさい、て。
- おかん
- こっちはエエから、その箱にガムテープして玄関に運んで。
- 息子
- ・・・なんやこの軽い箱。
- おかん
- 見んでエエって。
- 息子
- タッパ。・・・え、この箱ぜんぶタッパ入ってんの。
- おかん
- せや。
- 息子
- どないすんの、こんなタッパばっかり。
- おかん
- 要るの。ご近所さんにイカナゴあげたり、アンタんトコにかて、おかずとかほうれん草ゆがいたんとか送らなアカンし。
- 息子
- 新しい家、ここより狭いんやろ。
- おかん
- わかってるて。
- 息子
- 全然わかってへんやん。
- おかん
- せやかて、要るもんは要るし。
- 息子
- 要らんもんばっかしやん。
- おかん
- あんたは、なーんでも割り切るんが早いからなぁ。
- 息子
- なんよ。
- おかん
- マユミちゃん、ほんわりしたエエ子やったのに・・・。
- 息子
- まだ言うか。
- おかん
- あんな子が、あんたのお嫁さんになってくれたら、私も一安心やったのに。
- 息子
- しゃあないやろ。
- おかん
- しゃあない。・・・私もしゃあないんや。
- 息子
- ん。
- おかん
- わかってるよ、ゴタゴタして、いらん物ようけあって。これからはスッキリサッパリ生きてみたいよ。
- 息子
- そない言うたやろ、せやから手伝ってんのに。
- おかん
- でもな、ここでウチは家族みんなを支えてきたんや。健康で、平穏に、て。
- 息子
- ・・・。
- おかん
- 言うたら、この台所はウチの身体の一部みたいなもんなんや。
- 息子
- ん。
- おかん
- ちょっと、あんたどこ行くん。
- 息子
- コレ、玄関に持ってくんやろ。
- 息子、ダンボールを抱え、台所から出て行く。
- おかん
- もう、一人で大きなったような顔して・・・。
- 息子
- 思ってへんよ。感謝してるよ。
- おかん
- へへっ。
- 息子
- でもな。
- おかん
- え。
- 息子
- ちょっと贅肉つきすぎやで。
- おわり