- 男
- 久しぶり!
- 女
- ・・・連絡ありがと。
- 男
- なにつっ立ってんの、入って入って。
- 女
- うん。
- 男
- 元気しとったん?
- 女
- みんなは?
- 男
- ケンちゃんとヒロちゃんは、食料の買い出し。ヤッスンとタロウはお酒の調達。
他のやつらは、ちょっと遅れるって。
- 女
- ふうん。
- 男
- ちょう、これすごいやろ。
- 女
- たこ焼き機がなに?
- 男
- 穴、16個もあるねんぞ。本日は、たこ焼きパーティー!!
- 女
- 新年会で、たこ焼き・・・。
- 男
- なんや文句あるか?
- 女
- ないけど。なんでそんなにテンション高いの?
- 男
- 思い出話聞きたいか?
- 女
- ううん。
- 男
- あれは、僕が初めて友達のお誕生日会にお呼ばれした日のことです。
- 女
- 聞きたくないって言ってんのに。
- 男
- 僕は弟にせがまれて、お誕生日会に連れて行くことになりました。メインイベントはたこ焼きパーティ。しかしなんと言うことでしょう。お誕生日会に集まったのは九人。たこ焼き機の穴は8個だったのです。
- 女
- えっと・・・。
- 男
- わからんか、このセツなさ。
- 女
- 人数が九人で、たこ焼きは一度に八個しか焼けないってことがセツないの?
- 男
- 焼けるまで結構時間かかんねや。やっと焼きあがっても、一人は食べられへんわけやろ。弟を連れてきてしもた僕のプレッシャーわかるか?あん時、俺は、大人になったら一回でぎょうさん焼けるたこ焼き機を買う、て誓ったんや。
- 女
- 今日、何人来るの?
- 男
- ええと、9人。な、全然大丈夫やろ。
- 女
- あれ。
- 男
- なに。
- 女
- 九人のうち二人は、一個しか食べられないね。
- 男
- ほんまや。
- 女
- 私、やっぱ帰る。
- 男
- あ、いや、そんな意味で話ししたんちゃうで。
- 女
- うん。・・・やっぱみんなに合わせる顔がない。
- 男
- 実力認められて、引き抜かれて、チャンスをつかんだ。めでたいことやん。お祝いしようや。
- 女
- カンちゃん、その初めてのお誕生会で、たこ焼き食べなかったんでしょ。僕、お腹いっぱいだから、とかなんとか言って。
- 男
- う・・・。
- 女
- カンちゃんは、いい人だ。
- 男
- 寂しい言い方すんなや。
- 女
- 私、みんなに許されたいと思ってここに来た。でも間違ってた。私のこと許さないでいい。これから色んな人を蹴落として、どんなことしてでものし上がってく。そのつもりだから。
- 男
- たこ焼き、食べたよ。
- 女
- え。
- 男
- みんなかわりばんこに我慢してくれて、かわりばんこに食べた。だから余計にうまかったんかな。
- 女
- そう。
- 男
- 応援してるし。
- 女
- 応援しなくていい。
- 男
- じゃあアカンようになって、はよう俺らんとこに戻ってくるように祈ってるし。
- 女
- 絶対に戻らない。
- 男
- うん。
- 女
- じゃあ。
- 男
- じゃあ、またな。
- 女
- バイバイ。
- 終わってまた始まる