体温計が計測完了の音をつげる。
何度?
え?
今、体温計、ピピッて。
あ・・・七度五分。
けっこう熱あるし、今日は、バイト休ませてもらいな。
一人で寝てんのん、寂しいなぁ。
俺は行くで、仕事。
休もうよー。
あーほ。
やな夢みてん。
どんな。
同じ夢、何回も見る?
俺?
うん。
多分ないな。夢なんかほとんど覚えてへんし。
そっか。
そんなに何回も見る夢なん。
同じって言うか、ほんまに別の世界に行ってるみたいな・・・。
あ!
ん?
熱でた時、おでこに張るやつがあったかも。
ひんやりするやつ。
ええと、どこにしまったかなぁ(引き出しなどを探す)
あんな。
はいよ。
だーい好きやで。
わかってるでぇ。・・・お、あったあった。
・・・。
ど、どないしたん。
わからん。風邪ひいてるけど、今めっちゃ幸せやな、って思て。
そしたらなんか涙でてきた。
弱っとるのお。
ある日な突然、みんな、世界中の人がみーんな、怪獣になってまうねん。
夢の話?
うん。あたしはな、ずうっと怪獣と戦い続けてる。
怪獣ってゴジラみたいなん?
・・・赤黒い、モップみたいな、イソギンチャクみたいな・・・。
触手いっぱいあって、ぬめぬめしてるような?
そう、そんな感じ。その怪獣たちはな、絶対に死なへんねん。
刀で切っても、銃で撃っても、爆弾投げつけても。
ほれ。
えっ、何?
ひやっこくて気持ちエエやろ。
目ぇの上にまで張ることないやん。
剥がすな。
え?
ある日、一匹の怪獣が訪れこう言う。お前は一人ぼっちで、
一体何と戦っているんだって。
何であたしの夢・・・。
我々のことをお前は怪獣と呼ぶが、お前こそ、
この世の平和を乱す凶悪なモンスターではないか。
ねえ、冗談やめてや。
我々の仲間になれば、飢えることも、老いることも、病に苦しむこともない。
そんなん、嫌や。
俺のこと好きって言ってくれたろ。
好きや、好きやけど・・・。
体温計が計測完了の音をつげる。
何度?
え?
今、体温計、ピピッて。
あ、えと、七度五分。
終わってまた始まる