- 女
- 学生時代の話です。
私はこの時間が好きだった。彼のアパートに入る前、アパートの近くのコンビニで彼がコンドームを買うのをまっている時間が好きだった。私はコンビニの前にある公園で一人彼を待っている。
- 駆け寄る足音がして。
- 男
- 「買ってきたよ」
- 女
- 「今日は何を買ったの?」
- 男
- 「コンドームと、アポロチョコレート」
- 女
- コンドームしか買うものがない時、彼は決まって何かついでに買ってくる。私はその「ついで」に買われたものが好き。チョコとかビールとか。
- 駆け寄る足音がして。
- 男
- 「買ってきたよ」
- 女
- 「今日は何を買ったの」
- 男
- 「コンドームとハンドタオル」
- 駆け寄る音がして。
- 男
- 「買ってきたよ」
- 女
- 「何?」
- 男
- 「コンドームと白玉あんみつ」
- 駆け寄る音がして。
- 男
- 「買ってきたよ」
- 女
- 「何?」
- 男
- 「コンドームとシャーペンのしん」
- 駆け寄る音がして。
- 男
- 「買ってきたよ」
- 女
- 「何?」
- 男
- 「コンドームしか買わなかった」
- 女
- 「・・・そう」
- かぐや姫「神田川」イン。
- 女
- 別に寂しい気持ちになることはありませんが、その時なんとなく寂しかったです。
私がどうして何も買わなかったか聞くと、
- 男
- 「だって、必要なのはコンドームだけだろ」
- 女
- どうしたんだろこの人って思いました。そんなところで大人になられても。彼の部屋にいくと就職活動の資料請求の書類に埋もれて、彼の履歴書がありました。そこに張られた写真は私の知らない彼でした。
- 男
- 「お前、ガイダンスでてないんだって?」
- 女
- 「うん」
- 男
- 「どうすんの。就職」
- 女
- それは大学三回生の冬。コンビニおでんが美味しい季節。色んななんとなくが重なって、彼も遠い思い出です。
- おわり