- バーにて。
- 男
- だから結局さあ、まあ俺はメディアプランナーなんだけど、メディアのこと、信じてないからね?
- 女
- そうなんですか。
- 男
- いやだってね、どんなメディアにも、制約ってあるじゃん。多かれ少なかれ。
- 女
- ええ、ええ。
- 男
- それによって、こんなんつうの?そもそもコンテンツの持ってる情報が、ある意味、どっかで削られてるっていうかさあ、テレビにしても、まあ雑誌にしてもね、どっかでやっぱ、伝え洩らしてるっていう、そういうやっぱ、ジレンマはあるよね。
- 女
- へー。
- 男
- だから、やっぱりこういうメディアの仕事しててもね、まあ、できるだけその、メディアの特性を生かしたね、そのメディアでしかできない、なんつうの、表現までいうと大げさなんだけど、そういうことをしようとは、もちろん心がける一方でね。
- 女
- ええ。
- 男
- どうしてもやっぱ、メディアに対する、そもそもの不信感っつうか、絶望までいうと言い過ぎなんだけど、どっかにそういう部分は抱えてんだよね。メディアプランナーでありながらね。
- 女
- へー。
- 男
- だから、逆にいうとあれかもしれない。こうまあ、あらゆるコンテンツはメディアを介して、伝達されるわけだけど、こういうメディアの制約を、なるべく感じさせない、っていうか、むしろメディアを通さない、その、受け手との、直接のコミュニケーション。ってのが、究極的にはやりたくて、やっぱこの仕事やってんだな、ってのが、最近分かってきたんだよね。自分でも。
- 女
- はー。(触られて)なんですか?
- 男
- まあだから、君とね、メディアの仕事で知り合って、今まあこうして直接コミュニケーションできてるわけだけども。
- 女
- ええ・・・・・・。
- 男
- これだって、言葉っていう、目に見えないメディアを介して、やり取りしてるわけだから。そういうのだから、メディアの制約を、できるだけ取り払っていきたいな、っつうのはあるよね。
- 女
- はあ。
- 男
- 言葉っつうのも、結局50音でさあ、こんなになんつうの、あふれる思いがあるにもかかわらず、それをたった50音でって、表現しきれないわけよ。たとえばね。例えば、「愛してる」っていったときに、もうその時点で、情報が欠損してるっつうか、この俺の思いをね、たった5文字で表現しきれてないわけだよね。
- 女
- (触られて)ちょっと・・・・・・。
- 男
- だからさあ、できるだけメディアを取り払っていこうよ。空気だってこれ、メディアだから。空気という媒体を通すよりも、もっとこう、直接的なコミュニケーションってのが、あると思うんだよね。
- 女
- ええ?ちょっと・・・・・・
- 男
- だからやっぱ、メディアプランナーとしてはさあ、究極のやっぱ、コミュニケーションとして、
- 女
- やめてください!
- 男
- いやいやいや、そういうこっちゃない。
- 女
- ちょっと・・・・・・(平手打ち)
- 男
- あっ、そうそう。平手も、だから、メディアだよね。平手もメディアだし、もっとだから、直接的な・・・・・・
- END