喫茶店かどこか。
呼び出された男。
女は、切り出しにくそうに、おずおずと話し出す。
ごめんね、急に呼び出して。
なに、話って。
こんなこと、山口君にしか頼めなくって……。
(力強く)僕にできることなら、なんでも。
(笑って)ありがと。……私の、彼氏のことなんだけどね?
うんうん。
……浮気してるらしいのよ。女の子と手つないで歩いてるの、
見たって子がいるの。
別れなよ。それ香織ちゃん、もてあそばれてんだよ。
最後まで聞いてよ。
ごめん……。
その彼とはもう別れるからいいんだけど、
ああ、そうなんだ。よかった……。
ただ私、今その彼氏と一緒に住んでんのね。
うん……。
で、別れたら、出てかなきゃいけないじゃない。
住むとこなくなっちゃうのよ。
うちおいでよ。アパートだし、狭いけど、2人ぐらいなら……。
だから、最後まで聞いてって。
ごめん。で、なに?
それでね、私マンション借りたの。
だけど、最近ああいうとこって高いんだよね。
急だったから、貯金とか、ほとんどなくてさ……。
お金か……何とかするよ。香織ちゃんのためなら。
だから、そうじゃなくて。
ああ、ごめん、聞く聞く、最後まで聞く。
それで私ね、バイトはじめたの。
この際だから、気分変えてやろうって思って、夜のバイト。
そうなんだ……。
だけど、1人だけ、ちょっと怖いお客さんがいてね、
ずいぶん、しつこく迫ってくんの。彼氏いんのか、って聞いてくんのよ。
僕が、その彼氏になればいいんだね。……じゃないんだ?
でね、一度ちゃんと話さなきゃって思って、
だけど会ってしゃべってるうちに、つい私、カッとなっちゃって、
ちょうどそこに、ナイフが置いてあったから……
刺したの!?
今、私の車に、つんである、
……なんとかするよ。香織ちゃんのためなら僕。
(笑って)無理だよ。だから私、その処理をパパに頼んだの。
パパ?
パパちょっとやばい仕事やっててね、だからそういう処理とかは、
お手の物なの。
香織ちゃん?
だけど、パパはその代わり、私にある交換条件を出してきた。
頼みって何なの?
ロシアのある研究所に行って、最終兵器の設計図を盗み出してくる。
それが私に課せられたミッションなの。
ミッション!?
とても危険なミッションなの、1人じゃできないの。
あの、僕にも、できることとできないことが……
だけど、そんな私に協力者が現れた。その人はある能力の持ち主でね、
いとも簡単にそのミッションをなしとげてくれたの。
その人は光の戦士でね、私にもそれと同じ能力があるっていうのよ。
能力?
ほら、見て。これ紋章なの。私たちの使命は、全国にいる仲間を集めて、
邪悪な存在ダークマターを倒すことなの。
香織ちゃん。
今、世界は巨大なダークエネルギーに支配されようとしていて、
それを封じるには、4次元の扉を開けるライトセイバーがあればいいんだけど、
それを使うには人柱が必要なの。
僕にどうしろと!?
END