- 喫茶店かどこか。
呼び出された男。
女は、切り出しにくそうに、おずおずと話し出す。
- 女
- ごめんね、急に呼び出して。
- 男
- なに、話って。
- 女
- こんなこと、山口君にしか頼めなくって……。
- 男
- (力強く)僕にできることなら、なんでも。
- 女
- (笑って)ありがと。……私の、彼氏のことなんだけどね?
- 男
- うんうん。
- 女
- ……浮気してるらしいのよ。女の子と手つないで歩いてるの、
見たって子がいるの。
- 男
- 別れなよ。それ香織ちゃん、もてあそばれてんだよ。
- 女
- 最後まで聞いてよ。
- 男
- ごめん……。
- 女
- その彼とはもう別れるからいいんだけど、
- 男
- ああ、そうなんだ。よかった……。
- 女
- ただ私、今その彼氏と一緒に住んでんのね。
- 男
- うん……。
- 女
- で、別れたら、出てかなきゃいけないじゃない。
住むとこなくなっちゃうのよ。
- 男
- うちおいでよ。アパートだし、狭いけど、2人ぐらいなら……。
- 女
- だから、最後まで聞いてって。
- 男
- ごめん。で、なに?
- 女
- それでね、私マンション借りたの。
だけど、最近ああいうとこって高いんだよね。
急だったから、貯金とか、ほとんどなくてさ……。
- 男
- お金か……何とかするよ。香織ちゃんのためなら。
- 女
- だから、そうじゃなくて。
- 男
- ああ、ごめん、聞く聞く、最後まで聞く。
- 女
- それで私ね、バイトはじめたの。
この際だから、気分変えてやろうって思って、夜のバイト。
- 男
- そうなんだ……。
- 女
- だけど、1人だけ、ちょっと怖いお客さんがいてね、
ずいぶん、しつこく迫ってくんの。彼氏いんのか、って聞いてくんのよ。
- 男
- 僕が、その彼氏になればいいんだね。……じゃないんだ?
- 女
- でね、一度ちゃんと話さなきゃって思って、
だけど会ってしゃべってるうちに、つい私、カッとなっちゃって、
ちょうどそこに、ナイフが置いてあったから……
- 男
- 刺したの!?
- 女
- 今、私の車に、つんである、
- 男
- ……なんとかするよ。香織ちゃんのためなら僕。
- 女
- (笑って)無理だよ。だから私、その処理をパパに頼んだの。
- 男
- パパ?
- 女
- パパちょっとやばい仕事やっててね、だからそういう処理とかは、
お手の物なの。
- 男
- 香織ちゃん?
- 女
- だけど、パパはその代わり、私にある交換条件を出してきた。
- 男
- 頼みって何なの?
- 女
- ロシアのある研究所に行って、最終兵器の設計図を盗み出してくる。
それが私に課せられたミッションなの。
- 男
- ミッション!?
- 女
- とても危険なミッションなの、1人じゃできないの。
- 男
- あの、僕にも、できることとできないことが……
- 女
- だけど、そんな私に協力者が現れた。その人はある能力の持ち主でね、
いとも簡単にそのミッションをなしとげてくれたの。
その人は光の戦士でね、私にもそれと同じ能力があるっていうのよ。
- 男
- 能力?
- 女
- ほら、見て。これ紋章なの。私たちの使命は、全国にいる仲間を集めて、
邪悪な存在ダークマターを倒すことなの。
- 男
- 香織ちゃん。
- 女
- 今、世界は巨大なダークエネルギーに支配されようとしていて、
それを封じるには、4次元の扉を開けるライトセイバーがあればいいんだけど、
それを使うには人柱が必要なの。
- 男
- 僕にどうしろと!?
- END