カポエラダンスを見ている男女。
ビリンバウのリズム。(カポエラのBGM)
ほー。
ダンサーが踊っている。
最初ゆっくりなんだね。
そうそう。だんだんねえ、これが速くなってくるから。
キック。
ほらキック!
おわあ!
キック。
ほらきた!
うわあ!すごいねえ!これなに、ダンス?
んー、ダンスっていうか、もともとは、格闘技だったんだけど。
こう、看守の目をごまかすために、ダンスっぽくして、
カムフラージュしたっていう。
ほえー。
こうほら、手をね、
キック。
2人
うわあ!
ほらほら、蹴りばっかでしょう?
あれは、手を当時、縛られてたからで、手が使えなかったために、
こうやって足技が発達したっていう。
ああやって手を封じてるからこそ、
むしろ、蹴りのダイナミズムが引き立つっていうね。(得意げ)
うん。(夢中)
蹴りから、ソウルが伝わってくるっていうね。
ダンサーがちょっと手を使った。
今でも、手使ったよ?
(笑って)まあ、そりゃたまには使うこともあるけど。
このね、意外な姿勢から蹴りがグインと出てくる、この感じ。
ね。蹴りだけでこんなにもパターンがあるかっていう。
ダンサーがまたもや手を。
(笑って)また手使った。
まあまあ、あくまでも手は補助的なもので。
ほら、蹴りを観ないと。蹴りが本流なんだから。
あー。
蹴りのこの、なんていうの、インパクト?
大きくかき混ぜるように蹴りあげることで、
相手にどんどん、プレッシャーを与えていくっていう。
手を使う。
(笑って)まただ。手結構使ってるよ?
……あれ?
手を使う。
ああ、ほらほら。
……おっかしいなあ。
別に手もありなんじゃないの?
いやいや。……ちょっと、なんだろう。こんなハズじゃないけどなあ。
そうなんだ。
手をどんどん使う。
2人
ああ。
(切れ気味で)ちょっと、拡大解釈が過ぎるなあ、あの踊り手。
もっと、不自由な感じあったけどなあ。
もうだって、手めちゃめちゃつかってるよ。
ほらほら、ぶんぶん振り回してるもん。
ちょっと、どうなってんのこれ。
バックボーン、おかしいでしょう。台無し。
カポエラ、もっと不自由なはずでしょう?
ああもう、めちゃめちゃ自由だよ。
手を使って、羽ばたく感じのダンスになってるよ。
……アイデンティティ、守ってほしいけどねえ。
まあ、自由ではあるけどさあ。
2人
ああ。……あー。……うわー。
自在に舞うダンサー。
END