- カポエラダンスを見ている男女。
ビリンバウのリズム。(カポエラのBGM)
- 女
- ほー。
- ダンサーが踊っている。
- 女
- 最初ゆっくりなんだね。
- 男
- そうそう。だんだんねえ、これが速くなってくるから。
- キック。
- 男
- ほらキック!
- 女
- おわあ!
- キック。
- 男
- ほらきた!
- 女
- うわあ!すごいねえ!これなに、ダンス?
- 男
- んー、ダンスっていうか、もともとは、格闘技だったんだけど。
こう、看守の目をごまかすために、ダンスっぽくして、
カムフラージュしたっていう。
- 女
- ほえー。
- 男
- こうほら、手をね、
- キック。
- 2人
- うわあ!
- 男
- ほらほら、蹴りばっかでしょう?
あれは、手を当時、縛られてたからで、手が使えなかったために、
こうやって足技が発達したっていう。
- 男
- ああやって手を封じてるからこそ、
むしろ、蹴りのダイナミズムが引き立つっていうね。(得意げ)
- 女
- うん。(夢中)
- 男
- 蹴りから、ソウルが伝わってくるっていうね。
- ダンサーがちょっと手を使った。
- 女
- 今でも、手使ったよ?
- 男
- (笑って)まあ、そりゃたまには使うこともあるけど。
このね、意外な姿勢から蹴りがグインと出てくる、この感じ。
ね。蹴りだけでこんなにもパターンがあるかっていう。
- ダンサーがまたもや手を。
- 女
- (笑って)また手使った。
- 男
- まあまあ、あくまでも手は補助的なもので。
ほら、蹴りを観ないと。蹴りが本流なんだから。
- 女
- あー。
- 男
- 蹴りのこの、なんていうの、インパクト?
大きくかき混ぜるように蹴りあげることで、
相手にどんどん、プレッシャーを与えていくっていう。
- 手を使う。
- 女
- (笑って)まただ。手結構使ってるよ?
- 男
- ……あれ?
- 手を使う。
- 女
- ああ、ほらほら。
- 男
- ……おっかしいなあ。
- 女
- 別に手もありなんじゃないの?
- 男
- いやいや。……ちょっと、なんだろう。こんなハズじゃないけどなあ。
- 女
- そうなんだ。
- 手をどんどん使う。
- 2人
- ああ。
- 男
- (切れ気味で)ちょっと、拡大解釈が過ぎるなあ、あの踊り手。
もっと、不自由な感じあったけどなあ。
- 女
- もうだって、手めちゃめちゃつかってるよ。
ほらほら、ぶんぶん振り回してるもん。
- 男
- ちょっと、どうなってんのこれ。
バックボーン、おかしいでしょう。台無し。
カポエラ、もっと不自由なはずでしょう?
- 女
- ああもう、めちゃめちゃ自由だよ。
手を使って、羽ばたく感じのダンスになってるよ。
- 男
- ……アイデンティティ、守ってほしいけどねえ。
まあ、自由ではあるけどさあ。
- 2人
- ああ。……あー。……うわー。
- 自在に舞うダンサー。
- END