え?
「え」?
あれ、何を買いに来たんやっけ?
あんたがこいって言ったんやん。
うん。
え?なんも買いたいものないの?
いやあったとおもうんやけど…。
ちょっと私あした早いねんから。
別についてこんでいいよ。
あんたがついて来いって言ったんやん。
え?
言ったやんついてこいって。
…。
え、何買うのよ。タバコ?
いや、
お酒?
いや、
ヌムラー?
え?
ヌムラー?
…ごめんもう一回。
(少し大きな声で)新しいヌムラーを買いに来たんですか?
…。ヌムラーってなに?
は?
ごめん、お年寄りに接するような気持ちで接してくれへん。
いいけど。
ヌムラーって。
あんたが今左手にもってるやつやん。
これはコンニャクやろ。
コンニャクのことヌムラーって言うんやん。
(安心して)あぁ、コンニャクか。びっくりしたなんのことかと思った。
疲れてるんちゃう。大丈夫?
大丈夫ちょっとぽーっとしてただけ。…え? 
なに?
なぜ俺は今、左手にコンニャクをもってるの?
宿命ちゃう?
宿命?
いまさら何をいってるの?
左手にコンニャクもってうろうろしているのが、俺の宿命?
そう。
それは、どういう宿命?
だらか「捨ててしまえばいいものを大事にとっておく」
…あぁ。
大丈夫?自分の宿命忘れたらあかんで。
ごめん。
で、何を買うのよ。
そのヌムラーって呼ばれてるコンニャクは何に使うの?
は?
優しく教えて。
コンニャクは、コンニャク。
あぁ。
使わないコンセントの差込口に貼り付けとくの。
…。なぜ?
だってそうしないとヤマダさんが入るでしょ。
どこに?
差込口に。
…。
宿命の授業のとき習ったやん。ヤマダは家庭の隙間に入り込むのが宿命だって。
でも差込口はむりやろ。
でも入りたがるの。
それは宿命だから?
みんな宿命で苦労してるねん。
左手にずっとコンニャク握って、おれ今までどうやっていきてきたんやろ。
私が横にいて右手を握ってたんやん。
あ、
もう帰る?
うん。帰る。
おわり。