- 店員の声「ありがとうございましたー」など。
コンビニの自動ドアが開く。
外に出ると、雨が降っている。
- 男
- (傘立てを物色して)うわ、最悪だよ。
- 女
- どしたの?
- 男
- 傘盗まれてる。
- 女
- 何、ビニール傘?
- 男
- ビニ傘。
- 女
- ・・・・・・だけど、こないだそういえばテレビで言ってた。
- 男
- 何を?
- 女
- なんか、ビニ傘問題、とかいって。
- 男
- ビニ傘問題?
- 女
- 最近なんかすごい増えてるらしいよ。
- 男
- あー、こうやって盗まれるのが。
- 女
- そう。まさにコンビニとかで。
- 男
- あー。だけどあれだよね、盗むっていうのとは、ちょっと違う感じだよね?
- 女
- え?
- 男
- いや、だってさあ、あんまり何ていうか、盗んでる意識、ないじゃん。
- 女
- あー、まあビニ傘はね。
- 男
- こうなんか、割ととってもいいもの、みたいな。
- 女
- うんうん、「誰でも自由に使っていいコーナー」みたいな。
- 男
- そうそう。さっきのあの傘立てとかね。
- 女
- あんまりなんか、所有権ないよね。
- 男
- だからアレだね、オジサンとかだと、ビニ傘とかにもいちいち名前書いてんじゃん。
そういうい世代だと、やっぱ言うのかもね。
- 女
- ・・・・・・(考えて)それってだけど、なんか、弱ってるよね。
- 男
- 弱ってる?
- 女
- ・・・・・・人類、滅亡するよね。
- 男
- ・・・・・・いや、意味分かんないけど。
- 女
- だってさあ・・・・・・物欲、なくない?
- 男
- なに、俺たち?
- 女
- そうそう、上の人たちに比べて。
- 男
- あー。
- 女
- んまりこうなんか、不景気とかって、ピンとこなくない?
- 男
- まあ、(笑って)確かにずっと、ネットばっかりやってるけどなあ。
- 女
- でしょ?
- 男
- 基本的に、電脳世界にいるけどな。
- 女
- そう、だから、そうやってだんだん、欲がなくなっていってんじゃん。
- 男
- あー、なんか所有欲みたいな。
- 女
- そう、こうなんか、動物としての。
- 男
- はいはい、こう、一旦人類ゴールしちゃったみたいな。
- 女
- そうそう。
- 男
- それでなんかいずれは滅亡、みたいな。
- 女
- うん。
- 男
- 長えよ。結論まで。途中飛ばしすぎだよ。・・・・・・っていうかお前、何やってんの?
- 女
- ・・・・・・ない。
- 男
- なに、自転車?
- 女
- うん。・・・・・・
- END