- 女1
- 皆さんこんにちはいかがお過ごしでしょうか。今日は先生オリジナルのお料理、
「巻き添えまき寿司」と「思い出ちらし」をご紹介したいと思います。先生よろしくお願いします。
- 女2
- できるかぎり。
- 女1
- ではさっそく「巻き添えまき寿司」の具材なんですけど。
- 女2
- 基本的に彩を考えてくださればそれで結構です。ただクリスタルケイみたいな女に取られた、なんてことはめったにないと思うんですよ。三十一なら、二十三の女に、二十八なら二十三の、二十六なら二十三の、ですからちょっと素材が単調になってしまうかもしれませんね。
- 女1
- 二十三歳ってことは入社して二年目ってとこですね。
- 女2
- 興味ありませんけどね。
- 女1
- やさしくしちゃうんでしょうね。男の人って。
- 女2は女1をにらむ。
- 女1
- 怖い怖い。では先生が教護用意いただいた具材を紹介いたします。
- 女1はフリップを見せる。
- 女1
- 黒の下着上下セット。パンスト。白地に赤い、これはイチゴでしょうか、タンクトップ一枚。薄いピンクのキャミソール。茶色い髪の毛。以上です。先生これはどこで見つけられたんですか?
- 女2
- 脱水層に置きっぱなしになっていました。毛も絡まってました。基本的にまだまだ母親が必要な女ですね。小娘です。このタンクトップ、これをブラウスの下にきて仕事するんでしょうか。考えられません。
- 女1
- でも先生負けたんですよ。
- 女2は女1をにらむ。
- 女1
- ではまいてゆきましょう。
- 女2
- はい。
- 女2
- (巻きながら)♪いつも一緒に、いーたかった。隣で笑って、
- 女1
- 先生、やっぱりその歌ですか?
- 女2
- ・・
- 女1
- 無視されました。はい、「巻き添えまき寿司」の出来上がりです。はい。続いて「思い出ちらし寿司」のほうなんですけど。
- 女2
- これは自分のためにつくる料理ですね。ちょっと時間がたつのを待たなきゃいけないかもしれませんが、必ずつくってください。けじめです。
- 女1
- 材料をご紹介します。写真、数枚。これは映画の半券ですか、「カンフーハッスル」。それから・・先生これは?
- 女2
- 賃貸契約書ですね。二年前二ヶ月ほどですが、同棲してたんです。
彼が書類に婚約者って書いてくれて、嬉しくて・・。
- 女1
- なるほど。基本的に売れるものは売ってしまって、売れないもの、捨てるには儀式がいるってものを、具材に選べばいいわけですね。
- 女2
- はい。
- 女1
- じゃ、きっていきましょうか。
- 女2
- ・・はい。
- 女1
- 先生がんば。
- 女2
- まずは写真ですね。彼が写っている部分を切り抜いてください。
- 女1
- 先生、元彼氏ですよ。もう彼じゃありません。
- 女2
- ・・自分が写ってる部分はそのままゴミ箱に捨ててください。
- 女1
- え?捨てちゃうんですか?
- 女2
- はい。
- 女1
- どうして?
- 女2
- 決めたんです。もう終わりにしようって、
- 女2はリズミカルに「ハッハッハッ」と呼吸をし、一心不乱に米をきる。
しばらくその姿をみていた女1は少し涙ぐむ。
- 女2
- (混ぜながら)なんか、楽しくなってきたー
- 女1
- じゃあ写メとりますね。
- 女1は携帯で女2をとる。
- 女1
- いえーい。
- 女2
- 先生高島忠夫みたい。
- 混ぜ合わせ終わり。
- 女1
- 「思い出しらし寿司」完成でーす。
- 女2は泣きながら寿司を手づかみで口に運ぶ。
- 女1
- 先生。お味は?
- 女2
- ・・やり直したい。
- 二人下を向く。
- END