- 女
- 「やった。時給があがった。一年勤めて三十円アップ。五時間はいればサンゴジュウゴで百五十円。週に五回バイトに入ればかける五で、・・七百五十円。一ヶ月で、三千円近いアップ。さて、どうしよう」
- 夕食の風景。
- 女
- ねぇ。
- 男
- うん?
- 女
- なんかほしいものない?
- 男
- はぁ?
- 女
- 三千円いないで。
- 男
- え?
- 女
- 自給があがってさ、なんかプレゼントしようと思って。
- 男
- え、マジ?
- 女
- うん。マジ。
- 男
- うーん。
- 女
- 最近ほしかったもの。三千円以内で。
- 男
- うーん。
- 女
- 自分では買わないけど人に買ってもらって嬉しいもの。三千円以内で。
- 男
- うーん
- 女
- 子供のころから欲しかったもの。三千円以内で。
- 沈黙
- 女
- ほしいもの何もないの?
- 男
- ベーコン
- 女
- は?
- 男
- 子供のころすげぇベーコンすきで、すげぇ分厚いベーコンをモシャモシャ食べるのが夢だった。
- 女
- ベーコン、が、欲しいの?
- 男
- ほとんどステーキみたいなベーコン。厚さ二センチぐらいの奴。
- 女
- 了解。
- 夕食の風景終わり。
- 女
- 「私は二十八歳主婦。あの人は三十歳公務員。結婚して一年目。私のパートでためたお金がまとまった金額になれば、旅行に行こうと決めている。言うのも恥ずかしいが子供をつくるつもり。そのころ私は二十九.で、三十で子供産む。すごい。ほぼ完璧な私の計画。それもこれも全部あの人のおかげ。酒もタバコもパチンコもしない。欲しいものはって聞かれてベーコンと答える。あぁいい旦那をみつけたな私。偉い。」
- 「ジュー」とベーコンの焼ける音。またも夕食の風景。
- 男
- スゲー
- 女
- 一度ふたして焼いたから外はカリカリだよ。
- 男
- スゲー!
- 女
- 厚さ五センチだから!
- 男
- え?
- 女
- だから五センチにしちゃいました!
- 男
- ・・おれ、二センチでいいっていったよな。
- 女
- は?
- 男
- 二センチと五センチって、三センチも違うじゃん。
- 女
- ・・。
- 男
- 二センチの奴二枚食べて、それでも一センチあまるじゃん。そーゆうことどう思ってるの?
- 女
- え?
- 男
- もったいないよ。
- 男はナイフとフォークをおく。
- 女
- 「夫はとても悲しそうな顔をしてナイフとフォークをおいた。私はその時、この人あほじゃないだろうかと不安になった。ほぼ完璧なはずの私の計画。けれど馬鹿馬鹿しくてこんなこと誰にも相談できない」
- おわり