- そこは、某結婚式場のドレスの試着室。
試着室の中には白いドレスを着たサクラ。外にはシゲルが居る。
- 女
- なんだか動きにくいし、フワフワしてて甘えた感じだし、それに、なにこのへなちょこでウスウスの生地、こんなのすぐ破けちゃうよ。
- 男
- それ着てリングで戦うわけじゃないんだから。
- 女
- あーあ、ぜんぜん似合わねー・・・。
- 男
- そんなことないって。
- 女
- 見てないのに、どうしてわかるのさ。
- 男
- ・・・想像だけど、サクラは色白いし、背高いし、姿勢いいし似合いそう、いや似合うに決まってるでしょ。
- 女
- そうかな・・・。
- 男
- 似合わないわけがない!だから、
- 女
- ちょっと説得入ってない?
- 男
- んな事ないって。
- 女
- 絶対バカにされちゃうよ。
- 男
- 誰がバカになんかするんだよ。
- 女
- 普段は強がってるけど、お前もやっぱりフツーの女だったなって。
- 男
- あなたは女でしょ。結婚式なんだよいいじゃないか別に。
- 女
- だって笑われたら、ムカついてテーブルひっくり返しちゃうかもしんないよ、シャレになんないよ。
- 男
- とにかくそこから出てきて、見せてよ。
- 女
- 無理。
- 男
- じゃあさ、似合うか、似合わないかボクが見て決めてあげる。
- 女
- ダメ、もう着替える。こんなチャラチャラしたもんは私には似合わない。
- 男
- サクラが着たいって言ったんでしょ。
- 女
- そうだ!これあんた、着なよ。
- 男
- え、俺が?
- 女
- あんたがウエディングドレス着て、私はタキシード。どう?ウケるよきっと。
- 男
- サクラぁ、理屈に合わないこと言ってるのわかってっか?
- 女
- あんたこそわかる?そんくらい恥ずかしいの、あんたがドレス着ろって言われたくらい、恥ずかしいの。
- 男
- じゃあ、着物にするか、着物だったらチャラチャラしてないし、薄い生地でもないし、
- 女
- ダメ。
- 男
- 何が、どうして。
- 女
- 和風だろ、和風のあのメイクするんだよ。みんなヒキまくりだよ。
- 男
- もう・・・勝手にしろ。
- 女
- え。
- 男
- サクラが着たいもの着ればいいじゃない。オレ知ーらなーい。
- 女
- ね・・・シゲちゃん。
- 男
- ・・・。
- 女
- 居ないの?
- 男
- どうすんの。
- 女
- 私・・・私の母さんさ、結婚式挙げてないんだ。だから母さん、すごく楽しみにしてんだ、私のウエディングドレス姿。
- 男
- そうか、お母さんの為に、
- 女
- だけど、私は、私だもんな。妹も居るもんな。だからいいよなドレス着なくても。
- 男
- じゃ、何着るの。
- 女
- 私もタキシードにする。
- 男
- マジで?
- 女
- だって、私が着たいもの着ていいって言ったじゃん。
- 男
- 言ったけど・・・本当にそれでいいの?
- 間
- 女
- 本当は、本当は・・・着たい、フワフワのブリブリのドレスが着たい・・・小さい頃からの夢だったんだもん・・・。
- 男
- じゃあ、着なよ。
- 女
- でもやっぱりさぁ、
- 男
- ああもう、ああもう、何なんだよ、さっきからコロコロ意見変えやがって。
- 女
- そんなに怒んなよ、これが、乙女心ってやつよ。ヘヘッ。
- 終わってまた始まる