- 何本かの電車を見送ったあとで、
僕らは駅のホームに立ち尽くしてる
そして最後の電車も見送って
- 君
- あーぁ、行っちゃった。最後の電車。ねぇ?どおするのぉーん?
- 僕
- お前は・・・帰れば良かったのに。
- 君
- あんたが帰るまで付き合う。
- 僕
- 帰らないって。もう出てきちゃったんだから。
- 君
- 荷物まとめて?
- 僕
- やる気はあるから。
- 君
- どんな?
- 僕
- まだ・・・明確ではない、が。
- 君
- が?
- 僕
- じっとしてられなくなって。なんか出来そうで。だから、
- 君
- とりあえず家飛び出したのぉーん?
- 僕
- ないか?あるだろ?走りたくなる時が。雨上がって、太陽見えたらアスファルトが光って、あー、今走りてぇって。何もしてないのに、なんか徹夜しちゃった時に部屋から朝日が見えたら、あー、何か出来る、あー、今走りてぇって。
- 君
- ひゃくめーとるそう?
- 僕
- 違う。走るってカンジだろ、カンジ。
- 君
- そのやる気、ほかにまわすこととか考えないのぉーん?
- 僕
- 何していいか分かんないし。
- 君
- ぼらんちあ、とかどう?
- 僕
- てっとりばやいかもしれないけど、なんか、なんっか、違うから。
- 君
- でもくらしー、とかどう?
- 僕
- それもっと違うから。
- 君
- ねぇ、どうしてライターがいるのぉーん?
- 僕
- だから今にも燃えそうなやる気を、
- 君
- タバコ吸わないよね?
- 僕
- タバコのためだけにあるんじゃない・・・
- 君
- 燃えたぎってる?
- カチリとライター
君はタバコに火をつけて、大きく溜め息と一緒に煙を吐いた
- 僕
- 何!?タバコ吸うのか?
- 君
- そこにライターがあったから。
- 僕
- タバコはどっから!?
- 君
- タバコの為だけ。
- 僕
- え?
- 君
- それ以外はあんまし使わないほうがよくない?
- 僕
- ・・・何だよそれ・・・全部分かってる、みたいな言い方、
- 君
- 分かるのぉん。昔っから知ってる。どうせバカなこと考えてるんだ?
- 僕
- ・・・やる気、あるんだよ。燃えたぎるための、燃料は、ここにいっぱいあるんだよ。けど、
- 君
- けど。
- 僕
- 燃やしかたが・・・わかんないから。
- 君
- から。
- 僕
- 導火線・・・
- 君
- ごみ箱の中、燃えやすいもんばっかだもんね。
- 僕
- 目の前で燃えれば、分かるかなって。自分の中で、何でもいいから、火がつくかなって、
- 君
- あんたって、ほんと、おバカ。
- 僕
- 燃やしかたが、わかんないだけだって・・・
- 君
- じゃあ、キスしよう。
- 僕
- は?
- 君
- ライター捨てて、あたしとキスしよう。
- 君は、ライターを捨てた
遠く、遠くへ、投げるように
そうして僕らは、
- 僕
- そうして僕らは、キスをした。ごみ箱の中に火をつけるかわりに、僕らはただキスをした。そのあいだ僕はずっといくつもの導火線の方程式を考え続けた。きっとどんな方程式にもXに僕のやる気を代入すると、それらの答えは全て炎となる。僕のやる気は導火線を作り出す。うん、いい出発だな。
- きっと僕らは始発までキスを続けるだろう