社長室。
「ピー」という内線の音。
ガチャっと受話器をとる。
(電話ごしに、慌てた声で)社長!
どうした。
一階の工場なんですけど、ロボットたちが。
うん?
ロボットたちが、……今、反乱をはじめました!
反乱!?
みんなこう、いっせいに作業ラインを外れて、今、社長室に向かおうとしてます!
本当か!
どうしましょう!
ちょっと、もう少し状況を教えてくれ。
何、ロボットたちは、ここに乗り込んでくるのか。
はい。あ、でも、
なんだ。
なんか、今、出入り口のとこで、つっかえてます。
つっかえてる?
こうなんか、全員でいっぺんに出ようとして、出口のとこでガシャッってなって。
詰まってるのか。
なんか、絡まりあってます。ロボット同士がなんかもう、
ぐちゃぐちゃになってます。
その、一旦お互い譲り合って、みたいなことは、してないのか。
そこまでは、まだ計算が回らないみたいです。
そうか。
こう、ただお互い、やみくもに進み合うだけ、みたいな。
ロボットめ……。じゃあ、今はまだ、こっちに着きそうには、ないと。
とりあえずは。どうしましょうか。
他の、小型ロボットたちは、どういう感じになってる。
小型ロボットたちは、出口にむかう途中で、大体、コケたりしてます。
こけてる。
途中のコードとかに、引っかかったりして。あとなんか段差とか。
なるほど、じゃあ工場の出口にも、たどりつけてない、と。
床でぐるぐるのたうち回ってます。
で、他のロボットたちも、出口でつっかえてる、と。
はい。あ、でも、なんか、ほぐれ始めました!
ほぐれた?
出口で詰まってたロボットたちが、ほぐれ始めました。
いったんこう、お互い、譲り始めました。
学習しはじめたか……。
だんだんこうなんか、出て行けそうな感じになってます。
今、何体か、出口を抜けました!
いよいよ来るのか!
はい……ああだけど、まだそっちは大丈夫じゃないですかねえ。
どうしてだ。
途中だって、階段がありますから。多分そんなにスムーズにはのぼれないですから。
ああ、そこでも、学習に時間がかかる、と。
ロボットですから。
……ちょっと、様子をみてきてくれないか。
はい。(足音)……あー、やっぱりつっかえてますねえ。
今こう、なんとか階段を上ろうと、みんなで四苦八苦してます。
ロボット同士で、お互い押しあげあって、のぼろうとしてます。ああ、崩れた。
……なんか、不憫になってきたなあ。
ええ。
ロボット、応援したくなってきたなあ。
逃げますか?
いや……もうちょっと、見守ってみようか。
ああ、今またなんか、ぐちゃぐちゃになってきてます。
あー、ロボット同士が。
ええ、階段はやっぱこう、難易度高いみたいですねえ。
なるほど……。


どんどん感情移入していってしまう。