- 女
- あなたぁ。起きて。あなたぁ。
- 男
- ん~、何。何で。今日、日曜日だよ。
- 女
- 昨日、約束したでしょ。家事を分担しようって。
- 男
- 何、そうだっけか。
- 女
- ほら、もう。また。そうやって。約束やぶる。
- 男
- 違うよ。俺は、約束やぶる男じゃないぞ。プロポーズんときにもお前にウソはつかないって言っただろ。幸せに出来るかどうかわからないけど、それだけはやくそくするから、僕と結婚してくれないですか。和子さんと一緒になれるなら僕はアキレス腱を毎朝毎晩必ず…
- 女
- あなた。起きて。起きてってば。
- 男
- 何。何。起きてるよ。
- 女
- アキレス腱つかって何するの。
- 男
- 何言ってんの。寝ぼけてるの。
- 女
- あなたが言ったんでしょ。
- 男
- 言ってないよ。そんなこと。
- 女
- もう、いいわよ。とりあえず、布団を干すか、朝ごはん作るか、どっちか選んで。
- 男
- 何、その間、お前は何してるの?
- 女
- あなたが、布団干すなら、私が朝ごはん作るし。あなたが朝ごはん作るなら、布団干すし。どっちにする。
- 男
- ん~…
- 女
- ちょっと、聞いてるの?どっち。
- 男
- じゃあ、布団作る。
- 女
- そんな選択肢ないわよ。寝ぼけないで。じゃあ、何、私は朝ごはん干せばいいわけ?
- 男
- 何いってんの。ゴハン干してどうするんだよ。
- 女
- 私の話の時だけ覚醒しないでよ。どっちよ。
- 男
- 寝たい。
- 女
- その選択肢もないから。
- 男
- 頼むよ。二度寝させてよ。このうららかな休日の二度寝が唯一の楽しみなんだから。
- 女
- じゃあ、どっちか、ゴハン作るか、布団干すか、どっちかしてから寝たらいいでしょ。
- 男
- 馬鹿、それじゃあ、目が覚めちゃうだろ。それじゃあ、二度寝のロマンがなくなっちゃうんだよ。分かる。
- 女
- 分かんない。ちっとも分かんない。
- 男
- おいおい。俺は、今、すごいことに気付いてしまったぞ。
- 女
- 何よ。
- 男
- 俺が布団を干すとだな。俺はその後、どこで二度寝をすればいいんだ。
- 女
- 知らないわよ。ソファか、どっかで寝たらいいでしょ。
- 男
- それじゃあ、ダメだよ。ロマンがない。
- 女
- あなたのロマンの基準が分かんない。
- 男
- じゃあ、決めた。あれだ。俺が朝ごはん作るよ。
- 女
- じゃあ、私が布団を干すわね。
- 男
- お前は馬鹿か。それじゃあ、何のために、俺は朝ごはんを作るんだよ。
- 女
- 食べるため。
- 男
- うん。それはもっともな意見なんだが。流れを感じてみよ。俺は二度寝するために布団はこのままにしておきたいと。そういうことだよ。
- 女
- じゃあ、私は何してたら、いいの。
- 男
- ん~、だから、俺が朝ごはん作ってる間、この布団で二度寝してたらいいんじゃないかな。うん。ずるい。お前だけそれは卑怯だ。
- 女
- 知らないわよ。
- 男
- じゃあ、あれだよ、お前が朝ごはん作ればいいじゃないか。
- 女
- あなたは。
- 男
- その間、俺が二度寝を担当する。
- 女
- それはおかしいわ。
- 男
- だろ。そうなんだよ。この話は矛盾だらけなんだよ。だけど、俺はすごいことに気付いてしまった。
- 女
- 何。
- 男
- 二人とも二度寝すれば問題ない。な。これこそが公平だろ。夫婦平等だろ。これこそが、俺が言いたかったロマンにもつながるんじゃないかってことは分かるか。
- 女
- なんとなく。
- 男
- なんとなくでもいいよ。伝われば。よし。じゃあ、寝よう。もう少しだけ、うたた寝よう。はい。おやすみなさい。
- 女
- おやすみなさい。
- 男
- zzz
- 女
- …騙された!!