- 街頭インタビュー。
- 男
- (呼び止めて)どうもこんにちはー。街頭インタビューなんですけど。
- 女
- はい。
- 男
- これ今テレビで、「私の田舎のここが嫌い!」っていうテーマで
お話を聞かせてもらってまして、
- 女
- はあ。
- 男
- すいません、お生まれは、どちらですか?
- 女
- 日本海のほうです。
- 男
- 日本海!これはちょっと、お時間いただいてもよろしいでしょうか。
- 女
- はい。
- 男
- じゃあ、自分のご実家のほうで、こういう文化はちょっといただけないなー
みたいなところを、
あげつらって、物申してほしいんですけど。
- 女
- あー、じゃあ、まさに私の実家のことなんですけど。
- 男
- おー、ご実家を斬ると。
- 女
- 何年か前に、うちワイドテレビ買ったんですよ。
- 男
- ワイドテレビ。
- 女
- そうなんですけど、その使い方がなんていうか、すっごいカンに触る使い方で、
もうそれが嫌で実家を出たといっても過言ではない、っていう(笑)。
- 男
- それはどういうことですか?
- 女
- あれってね、こう、映画みるときってすごい、いいじゃないですか、
こうシネマモードみたいな感じで。
- 男
- ええこう、上下の黒い部分がちょうど切れるみたいな。
- 女
- ええ。ワイド画面いっぱいにみれるみたいな。
だけど、あれ普通の番組見るときって、こう、逆に、左右が余っちゃうでしょう?
- 男
- ええこう、両はしに黒いゾーンができちゃいますよねえ。
- 女
- そうそう。こう、標準モード?で見ると、映像が映ってない部分が、
左右にできちゃうんですけど、でも、それはもうだって、しょうがないことじゃないですか。
- 男
- まあまあ、宿命といいますか、画面の比率が違うわけですからねえ。
- 女
- そこを、うちの実家は、実家っていうか父さんなんですけど……
ワイドモードで見るんですよ。
- 男
- ……それは、こう、画面の上下が切れるってことですか?
- 女
- じゃないですよ。それはシネマモードで。じゃなくて、ワイドモードですから。
- 男
- (考えて)あー。
- 女
- ええ。
- 男
- こう、画面が、左右に伸びるやつ!
- 女
- そう!そうなんですよ。
- 男
- はいはいはい。
- 女
- こう、画面全体をフルに使える代わりに、ちょっと画面が横に伸びちゃうみたいな。
- 男
- ありますねえ、ワイドモード。
- 女
- (力を込めて)それっがもう、ほんっと嫌なんですよ。
左右が余ったって別にいいじゃないですか。
そんなに目いっぱい画面使うことないでしょう?
- 男
- まあまあね。
- 女
- それか、どうしても大きい画面でみたいなら、
こう、シネマモードにすればいいじゃないですか。
- 男
- あー、まあ、上下ちょっとずつ切れますけど、
- 女
- そこをワイド画面を選んじゃう神経!
- 男
- あー。
- 女
- こう、画面の両はじもムダにしたくないし、かといって、
上下が切れて、なんかそこを見逃すのももったいないし、ていうので、
じゃあもう画面が横に伸びるのには目をつぶろうっていう、
その神経が許せないんですよ!
- 男
- 憤ってますねえー。
- 女
- だって、気持ち悪くないです?縦横の比率はいいのかよって話ですよ。
そこを犠牲にするかよ、っていう。
- 男
- それはご両親が、機械に弱いわけじゃ、ないんですよね。
- 女
- じゃなくて、ただ、もったいないだけなんですよ。せっかくの画面なんだから、
フルサイズ使って観ないと、もったいないおばけが出ちゃう、的な。
- ここから、男女の声は、テレビからの出力っぽい音声になる。
- 男
- (テレビからの音)まあまあそんなこともあって、飛び出してきたと。
- 女
- (テレビからの音)そうなんですよ。ホントだから、家出同然ですよ(笑)。
- 男
- (テレビからの音)いやいやでもね、ほほえましいもんじゃないですか。
- 女
- (テレビからの音)ほほえましくないですよー。みすぼらしいですよー。
- などなど、テレビでインタビューが流れている。
お茶の間で、それをみている夫婦。
- 夫
- おい母さん、これ今映っとんの、ヒロコやねえか。
- 妻
- ありゃあー、ほんまやわー。
- 夫
- (喜んで)おー。……これ、画面の比率戻すの、どこ押すんやっけなあ。
- 妻
- 「画面切り替え」やなかったけ?
- 夫
- (笑って)娘の顔左右に伸びとったらしゃーないがな。おい、ビデオとっとけ。
- 妻
- はいよー。
-
- ・
・
・
- END