街頭インタビュー。
(呼び止めて)どうもこんにちはー。街頭インタビューなんですけど。
はい。
これ今テレビで、「私の田舎のここが嫌い!」っていうテーマで
お話を聞かせてもらってまして、
はあ。
すいません、お生まれは、どちらですか?
女 
日本海のほうです。
日本海!これはちょっと、お時間いただいてもよろしいでしょうか。
はい。
じゃあ、自分のご実家のほうで、こういう文化はちょっといただけないなー
みたいなところを、
あげつらって、物申してほしいんですけど。
あー、じゃあ、まさに私の実家のことなんですけど。
おー、ご実家を斬ると。
何年か前に、うちワイドテレビ買ったんですよ。
ワイドテレビ。
そうなんですけど、その使い方がなんていうか、すっごいカンに触る使い方で、
もうそれが嫌で実家を出たといっても過言ではない、っていう(笑)。
それはどういうことですか?
あれってね、こう、映画みるときってすごい、いいじゃないですか、
こうシネマモードみたいな感じで。
ええこう、上下の黒い部分がちょうど切れるみたいな。
ええ。ワイド画面いっぱいにみれるみたいな。
だけど、あれ普通の番組見るときって、こう、逆に、左右が余っちゃうでしょう?
ええこう、両はしに黒いゾーンができちゃいますよねえ。
そうそう。こう、標準モード?で見ると、映像が映ってない部分が、
左右にできちゃうんですけど、でも、それはもうだって、しょうがないことじゃないですか。
まあまあ、宿命といいますか、画面の比率が違うわけですからねえ。
そこを、うちの実家は、実家っていうか父さんなんですけど……
ワイドモードで見るんですよ。
……それは、こう、画面の上下が切れるってことですか?
じゃないですよ。それはシネマモードで。じゃなくて、ワイドモードですから。
(考えて)あー。
ええ。
こう、画面が、左右に伸びるやつ!
そう!そうなんですよ。
はいはいはい。
こう、画面全体をフルに使える代わりに、ちょっと画面が横に伸びちゃうみたいな。
ありますねえ、ワイドモード。
(力を込めて)それっがもう、ほんっと嫌なんですよ。
左右が余ったって別にいいじゃないですか。
そんなに目いっぱい画面使うことないでしょう?
まあまあね。
それか、どうしても大きい画面でみたいなら、
こう、シネマモードにすればいいじゃないですか。
あー、まあ、上下ちょっとずつ切れますけど、
そこをワイド画面を選んじゃう神経!
あー。
こう、画面の両はじもムダにしたくないし、かといって、
上下が切れて、なんかそこを見逃すのももったいないし、ていうので、
じゃあもう画面が横に伸びるのには目をつぶろうっていう、
その神経が許せないんですよ!
憤ってますねえー。
だって、気持ち悪くないです?縦横の比率はいいのかよって話ですよ。
そこを犠牲にするかよ、っていう。
それはご両親が、機械に弱いわけじゃ、ないんですよね。
じゃなくて、ただ、もったいないだけなんですよ。せっかくの画面なんだから、
フルサイズ使って観ないと、もったいないおばけが出ちゃう、的な。
ここから、男女の声は、テレビからの出力っぽい音声になる。
(テレビからの音)まあまあそんなこともあって、飛び出してきたと。
(テレビからの音)そうなんですよ。ホントだから、家出同然ですよ(笑)。
(テレビからの音)いやいやでもね、ほほえましいもんじゃないですか。
(テレビからの音)ほほえましくないですよー。みすぼらしいですよー。
などなど、テレビでインタビューが流れている。
お茶の間で、それをみている夫婦。
おい母さん、これ今映っとんの、ヒロコやねえか。
ありゃあー、ほんまやわー。
(喜んで)おー。……これ、画面の比率戻すの、どこ押すんやっけなあ。
「画面切り替え」やなかったけ?
(笑って)娘の顔左右に伸びとったらしゃーないがな。おい、ビデオとっとけ。
はいよー。
 


END