- 喫茶店の店内。
男女。
- 女
- この店ってさあ、高そうに見えて、結構そうでもないんだね。
- 男
- あー……。
- 女
- なんで流行ってないんだろう。
- 男
- ……だけどさあ、ここ、高くない?
- 女
- そう?
- 男
- いやいやあの、値段じゃなくて。テーブル。これほら。
- 女
- ……ホントだ。
- 男
- これちょっと、高いよねえ。
- 女
- (笑って)高いねえ。テーブル、高いよねえ。
- 男
- こう、イスに対して。
- 女、笑う。
- 男
- (笑って)なんでだろう。これだって、テーブル、胸の位置にあるよねえ。
- 女
- (笑って)ちょっと、これ不自然なくらい高いよねえ。
- 以降、ほぼ笑いながらの会話。
- 男
- だからここ流行ってないんじゃないの?
- 女
- テーブル高いせいで?
- 男
- テーブル高いせいで。だって、それくらいの障害あるだろう。(笑って)高いもん。
- 女
- (笑って)高いよねえ。
- 男
- コーヒー飲むのに、支障あるだろう。
- 女
- 店長とかこれ、気付いてないのかなあ。
- 男
- 分かんない。言ってやったらいいのになあ。
- 女
- (笑って)うんうん。
- 男
- テーブル低くしたら、それだけでかなり客入るだろう。
テーブルのせいで、客遠のいてるだろう。
- 女
- うん。……(笑う)。
- 男
- え?
- 女
- (笑う)だめだ、座ってると笑えてきちゃう。あーダメだ。(立て直そうと、咳払い)
でも、女、やっぱり笑っちゃう。すごく笑う。
- 男
- (笑いながら、小声で)笑うなよ。
- 女
- (笑いながら)ダメだ、はまったこの高さ。
- 男
- (笑いながら)確かに面白いけど。
- 店員
- お待たせしました。
- 女、咳払いしてごまかす。
- 店員
- アイスコーヒー2つです。
- 店員、アイスコーヒーをテーブルに置く。
2人、思わず吹き出す。
そして、こらえつつも笑ってしまう。
- 男
- (笑いをかみしめて、小声で)お前バカ、笑うなよ!
- 女
- (笑いながら)だって、だって、
- 男
- アイスコーヒーも……グラス高いけどさあ。
- 2人、吹き出す。
- 男
- (笑いながら)だから、笑うなって!
- 女
- (笑って)ヤバーイ。飲めないよこんなのー!
- ハマって泣き笑いみたいになってる2人。
- 男
- (笑いながら)なんで、テーブルが高くて、さらにグラスも高いんだよ。
- 女、笑っている。
- 男
- 立って飲まなきゃいけないじゃん。
- 2人、ひーひー笑う。
- 男
- (笑いながら)ちょっ、他の客がみてる。他の客が見てる。
- 女
- ヤバイね。ヤバイね。(咳払い)なんでもない。
別になんでもないことなんだから。(自分に言いきかせ、なんとか立て直す)
- 男
- ちょっとね、テーブルとグラスが高いだけだから。
- 女
- うん。ちょっと、もう笑わさないでよ。飲めないから。
ほら、飲むよ。ストロー開けてほら。
- 男
- (気付いて)これだけど、ストロー、曲がんないやつじゃない?
- 女
- え?
- 男
- これだからほら。
- 女
- ホントだ。
- 男
- 真っ直ぐなやつだから、これをこう、アイスコーヒーに差すと、
- ストローを差す音。氷がカランと鳴る。
2人、思わず笑いをこらえる、
- 男
- ……さらに高くなった。
- 2人、大爆笑。
- 男
- お前のとこにもほら。(差す)
- 2人、大爆笑。
- 女
- これちょっと、飲めないじゃんもうー。
- 男
- おっもしれー。何でこんな高いんだよ。
- 女
- 涙出てきた……。
- 男
- ちょっと、飲んでみて。
- 女
- ええ?
- 男
- 飲んでみて。いいから。
- 女
- やーだ。絶対、笑わそうとしてるもん。
- 男
- してないしてない。
- 女
- してるよ。
- 男
- してないよ。ちょっと、飲んで。いいから。飲んで。
- 女
- ……絶対、笑わさないでよ。
- 男
- 大丈夫大丈夫。
- 女、呼吸を整え、アイスコーヒーを飲む。
- 男
- ……これ、座高が高い人の専門店かなあ。
- 女、笑ってコーヒーを噴き出す。
- 男
- ゴメンゴメン!
- 女
- 笑わさないでっていったじゃん!
- 男
- ちょっと、みてる。みんなみてる。
- 女
- もうー。これちょっと、飲めないよー。
- 2人、ハマって、いつまでもコーヒーが飲めない。
- ・
・
・
- END。