- これから一緒に生きていこうと誓い合った、若い2人。
夜明け前の、布団の中。
- 男
- (ささやくように)愛してる。
- 女
- ……ユウ君。
- 男
- ……サチ。
- 女
- ……私たち、これからうまくやっていけるかなあ。
- 男
- (笑って)ええ?
- 女
- こんなバカ2人だけど……。
- 男
- 不良品同士、何とかなるって。
- 女
- ……(頷く。少し涙ぐんでいる。)
- 男
- 何とかなる。
- 女
- でも、私、ホントに頭悪いよ?
- 男
- オレだって。
- 女
- 例えば、「IT革命」とかって、全然何のことかわかんないよ。
- 男
- あのなあサチ。そりゃオレだって分かんないよ。
分かんないけど、お前とオレが出会って、お前がオレに起こした革命は、
そんなIT革命なんかより、ずっとずっと、デカかったよ。
- 女
- (涙ぐんで)ユウ君……。
- 男
- そんな愛の革命に比べれば、IT革命なんて、チッポケなもんだよ。
- 女
- ……だけど、
- 男
- ん?
- 女
- だけど、「金融ビッグバン」っていうのも、私、何かわかんないよ。
- 男
- サチ。お前と、オレが出会ったことが、何よりのビッグバンなんだよ。
この出会いこそが、まさに、俺たちにとっては最大のビッグバンなんだよ。
これ以上のビッグバンなんて、あるか?
- 女
- (感動して)ユウ君……。
- 男
- あと、何がわかんない?
- 女
- んー、「光ファイバー」。あれもわかんない。
- 男
- 光ファイバーは、確かに素晴らしいよ。
だけど、俺の想いは、光ファイバーよりも、何よりも早く、お前に届く。
- 女
- じゃあ……2000年問題。
- 男
- オレにとっては、今お前が、一番の大問題だよ。
5年前に何があったかなんて、知るもんか。
- 女
- うーんと、コンピューターウイルス。
- 男
- コンピューターウイルスなー。
それよりもよっぽどやっかいなウイルスに、俺たちは犯されてんだよ。
- 女
- えー、地球温暖化。
- 男
- そうだなあ、もうこのオレの、燃えたぎるハートの熱さに比べたら、
地球の温度なんて屁でもないよ。
- 女
- じゃあ、バーチャルリアリティ。
- 男
- まさにリアリティだよ。こうして今、お前を感じてる、これこそがリアリティだよ。
- 女
- ハードディスク。
- 男
- (考えて)ハード、えー……お前への気持ちは、そう、まさにハード。
すごい、こう、激しいっていうの?ハード。
- 女
- (間髪いれず)マルチメディア通信。
- 男
- ……早いな。
- 男
- マルチメディア通信。
- 男
- マルチメディア通信……したらいいじゃん俺とお前でさあ。
しようぜマルチメディア通信。
- 女
- デフレスパイラル。
- 男
- スパイラル。こう、お前ともつれ合って、こっちの方がよっぽどスパイラル。
- 女
- ファジー理論。
- 男
- 理論もへったくれもないだろう。お前と俺の間には、理論を越えた、こう……
- 女
- ヒートアイランド現象。
- 男
- ……お前さあ、賢いんじゃないの?
- 女
- ヒートアイランド現象。
- 男
- えー、今まさに、これが、ヒート愛ランド現象だよ。
あの、アイは、漢字の「愛」っていう……
- 女
- DNA。
- 男
- えー、誰よりも、……なんじを、愛すよ。
- 女
- インサイダー取引。
- 男
- こう、お前と、魂のインサイダー取引がしたい。お前を悪魔にたとえるなら、
- 女
- インストール。
- 男
- 俺の中には、お前がインストールされてる。
- 女
- プロバイダー
- 男
- お前は……オレのプロバイダーだよ。ある意味。
- 女
- マニフェスト。
- 男
- えー、今夜お前とマニフェスト。
- 女
- ダウンロード。
- 男
- いっそお前とダウンロード。
- 女
- ダイオキシン。
- 男
- いやんばかん、ダイオキシン。
- 女
- セラミック。
- 男
- そんなことしちゃ、セラミック。
- ・
・
・
- END。