ニュース番組のジングル。
(キャスター)報道ラジオジャーナル、続いては、台風のニュースです。中継先の、村上さん?
中継に行くジングル。
台風の中、女レポーターがしゃべっている。
台風中継独特のハイテンションで。
はい!現場の村上です!こちらもう、すごい風です!本当、すごい風なんです。もうビュンビュン!
今そこはどこですか?
(聞いてない)もうさっきから、立ってるだけでやっとの感じです!
村上さん?
雨ももう、叩きつける感じで、
今、そこはどこですか?
(何かを見て)もう、たくさん吹き飛んでます!
村上さん。
(興奮して)次から次へと……
どこかを、まず言っていただかないと、ラジオの中継なんで……
わーもう、どんどん吹き飛んでいってます!
何が飛んでるんですか?
ほーんとにもう、すごい風なんですよー!天が怒り狂ってるという表現がぴったりの!
表現とかはいいんで、村上さん。
ノアの箱舟があったら、乗せてほしい気分です!
どこですか?今そちらは。
もう何か、一度濡れたらもう、どうでもよくなって来ちゃいました!
ええ?
何か楽しい!非常に今、台風のせいか、気分が高揚してます!
村上さん。その、興奮してるのは分かりましたから、どこかをまず言っていただかないと。
波がすごい、逆巻いてますねえ。
波?
波が風で逆巻いてます!
海なんですかそこは?
サーフィンしたい!
村上さん?
ビッグウエンズデーでも来ちゃいそうな……。
その、あなたの感情は十分伝わってきましたから、そこは今、どこなんですか?
……は?
海なんですか?どこなんですか?
……すいません、ちょっと聞きとりづらいです!
(はっきりと)そこの、場所を、
(笑って)見てください。地元の方が!
村上さん!
あれはおそらく地元の方でしょうか、
見えないんでこちらからは。ラジオなんで。
(笑って)こんな台風だっていうのに、あんな。さすが、海の民という感じです!
そちらの状況が全然わかりません。
慣れてらっしゃいます!(笑って)うわー、よくこんな状況で。
何かやってらっしゃるんですか?地元の方が。
本当こっちすごいんですよー!もうびしょぬれです!
ちょっと全然、そちらの状況が伝わってこないんで。
あっちの方にも、はい。行ってみましょう!(走る息づかい)
どこ行ってるんですか?いい加減にしないと村上さん。
(勝手に感動している)うわー、ここはもう、うわー!
……どこで何してるのか、村上さん。
表現できない……。何とお伝えしていいのか……。
伝えないと、あなた報道でしょう?ジャーナルしてください、村上さん!
もう、さっきから、吹き飛ばされそうで…… あっ、取れちゃった!すいません。
何かとれたんですか。
ごめんなさい、取れちゃいました……(直している)
それは何か、台風情報とは関係ない感じですか。こっちサイドの話ですか。
(誰かが何かしてくれて)あっ、ありがとうございます!(笑って)地元の方がやさしいんです!(地元の人に)すいません……。
地元の方が何か、よくしてくれたんですか、ちょっと村上さん!村上!
はーい!
あなた、全然報道できてない!何にも、状況が伝わってこない!
ええ?
まず、どこにいるんですかあなたは。海なんですか。どこなんですか?
聞こえません!
台風は一体、どうなってるんですか。
全然聞こえません!もう本当、風がすごくて、聞いてください!行きますよ……
村上さん?
暴風の音。
……村上さん!中継してください!放送事故ですよこれは。描写してください!状況を、伝達してください!
 


END